54 ページ7
少し気だるい体に鞭を打って、本当は微熱があったにも関わらず無茶をしてまで登校したと知られたら怒られるだろうか。
自分がしてしまった行動は時間が経てば経つほど客観的に見ることが出来る。だからこそ、俺は少し否とても大きく道を踏み外したと言える。
“嘘じゃない”その言葉はまごうことなき本物で、でもそれをAがどう捉えたかはわからない。いつまでも来ない返信を待ち続けて、結局は俺の体調を心配するメッセージが届いた。それ自体は嬉しかったけど、俺の言葉はなかったことにされたみたいで悲しかった。
だけど、今すぐ同じように俺の気持ちを伝えたとて上手く行く確率は低いことはわかっている。
それならば、
彼女がなかったことにしたいのなら、
《今まで通り普通に接してくれたら嬉しい》
何度も頭の中で繰り返し考えた結果を筆に乗せた。
でも、渡してしまってから後悔している。
高地がAと呼ぶ姿も、名前で呼ばれて嬉しそうに笑うAの姿も見たくなかった。ちょっとだけ優位に立ててたと思っていたのに胸の奥がぎゅ、と痛くなる。
どうしても会って話したかったと決意した朝の自分を恨みたい。
「大我？具合悪いの？」
「ん、ちょっとね」
マイナスな思考回路のせいか、それともまた熱がぶり返したのか、ガンガンと締め付けられる頭痛も相まってまともに高地の顔さえも見れない。
「顔色悪すぎ。保健室行く？付いて行こうか？」
「…ごめん、お願い」
「ほら、肩貸す？それともお姫様抱っこしようか？」
「ジェシーみたいなこと言わないでよ。大丈夫だから」
お弁当の包みを開けようとしていた高地には申し訳ないが１人で保健室まで辿り着ける自信がないから付き合ってもらう。Aたちが席を立っていたときで良かった。
「そんなに無理してまで学校来たかったわけ？」
「まあ、そうだね」
「…A？」
「うん。高地さ、抜け駆けはフェアじゃない、って言って俺も遊園地に誘ってくれたでしょ？それなのに俺、あの日抜け駆けしようとして、Aに遠回しにだけど気持ち伝えたんだ」
「っ、そう、なんだ」
「でもさ、Aには伝わってないのか無かったことにされてるのか…だから今まで通りでいてって言いたくて」
「そっか」
「隠してたらフェアじゃない、でしょ」
「だな。俺は昨日やっと本気で向き合う覚悟が出来たからあの日のこと知れて良かったよ」
お互いに頑張ろうな、なんて言えてしまう高地に俺が敵う日が来るのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
