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人混みの中を逃げるように逆流してもうすぐ鳥居を抜ける、というところで横から手を引かれた。驚いて顔を上げればそこに居たのは見知り過ぎた顔。
「あ、やっぱりAだ。どうしたの？」
「サエ、ジェシーくん」
「あれ？高地は？一緒じゃないの？」
人波から離れてりんご飴を持った２人に経緯を説明。優吾くんから逃げて来たのだと言えばジェシーくんは浮かない表情をした。
「高地とちゃんと話せてないじゃん」
「話したよ。でも、」
「ううん。高地の気持ちちゃんと聞いてないでしょ」
「嬉しくないって言われたけど」
「はあ！？優吾そんなこと言ったの！？」
「え、うん。素直に嬉しいとは思えないって」
「ちょっと待って。本当に高地が言ったの？聞き間違いとかじゃなくて？」
「２人とも何回私の傷を抉れば気が済むのよ」
もう涙も引っ込んだ。数分前の出来事を何度も何度もここに来るまでも思い出しては胸が痛んで、もしかしたら優吾くんに受け入れてもらえるのかも、なんて浮かれていた自分が恥ずかしい。
「明日から夏休みで良かったよ。１ヶ月近く会わなくてすむし」
「本当にそれでいいの？後悔しない？」
「もう私が言いたいことはちゃんと言ったの。だから後悔なんてしない」
「そう？でも高地はまだ話足りないみたいだから逃げないで話聞いてあげてよ」
え？と思うと同時に優吾くんが走って来てくれたのだろう、息を切らしてジェシーくんの隣に立っていた。
「ジェシー、おま、もっとわかりやすい所にいろよ」
「せっかく足止めしたのにそれはないでしょ」
「だいたい佐伯もさあ、」
「えー文句？私はこのままA連れて帰ってもいいけどなあ、なんて」
サエにぽん、と背中を押されて優吾くんの目の前に立つ。優吾くんはジェシーくんに何か言われたみたいで少し目線が彷徨っている。
「ちょっとだけ、俺に時間ちょうだい」
行こう、と優吾くんに手を引かれて歩く。鳥居を抜けてお祭りの賑やかな音は聞こえるけど人の姿は疎らな駐輪場の隅にたどり着いた。離された手はまだ暖かく、少し間を空けて腰掛けた。
「さっきはごめん」
「っ、ううん。私こそ急に変なこと言っちゃって、」
「俺ね、大我がAを好きになる前からずっとAが好きだった」
「…え？」
「自転車で転んでAに絆創膏もらった話覚えてる？」
「うん。田中くんたちと一緒に居たんだよね」
「樹が調子のってハンドル操作ミスってさ、転んでケガして、めっちゃ痛かったけどAと出会えた。あの時一目惚れしたんだよね」
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
