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「慎太郎と、大丈夫だった？」
「うん」
「そっか」
今までどうやって話してたっけ？って思うくらい言葉が出てこない。やっと最近普通に、ギクシャクはなくなったくらいにはなったけど、どこか気まずいってお互いに思っているのは確かだろう。
「あのさ、大我とのこと聞いてもいい？慎太郎とか樹とかじゃなくて、ちゃんとAから聞きたい」
田中くんから何かしらは聞いたのかもしれない。それでも話を聞きたいと言ってくれたのが嬉しくて苦しくて、ぽつりぽつりと説明下手な私の話を優吾くんは黙って聞いてくれた。
大我くんから告白された時のこと、お試し期間だったこと、それが終わったからお別れしたこと、それから……
「あー、じゃあ慎太郎の勘違いじゃなかったってことか」
「…ごめんなさい」
「なんで謝んの？Aは別に何も悪いことしてないじゃん」
「そうだけど、」
いきなり優吾くんが好きなんです、なんて言われても困るだけでしょ？そう言って視線を下げる。どれくらいの沈黙が続いたかな。周りの音が聞こえないくらい自分の心臓が大きく音を立てている。
「そりゃ素直に嬉しいとは思えない、かな。でも、」
「そうだよね。ごめんね、変なこと言って」
「え、あ、A！？」
人混みに紛れてしまえば優吾くんの声も聞こえなくなった。逃げてしまったけど、明日からはしばらく顔を合わせなくて済む。夏休みの間にしっかり気持ち切り替えなきゃ。
周りは楽しそうなのに私だけに雨雲がかかっているみたいに頬に冷たい水が滴り落ちた。
「あーあ、逃げられちゃった？」
どうせ居るだろうと思っていたけど、裏の茂みから出てきた大我たちにため息をつく。
「早く追いかけないと白石さん本当に帰っちゃうよ」
「…追いかけてどうすんの」
「このまま夏休み入ったら絶対お前後悔するじゃん」
「そんなこと、」
「大体さ俺らが何の為にこうしてお前らの為に時間作ったと思ってんの？俺らの努力無駄にする気？」
「別に頼んでねえよ」
お前らが勝手にしたことだろ、と言えば樹と大我は分かりやすく不機嫌そうな顔になる。
「そうだよ。これは俺らが勝手にしたこと。でも、高地の為じゃない。白石さんの為だから」
「北斗の言うとおり。白石さんのこと泣かせるなって言ってたくせに高地が泣かせてもいいわけ？」
「それは、」
「さっさと行って謝って掴まえてこいよ。じゃないとまた俺がもらう。今度こそ遠慮なんてしないから」
とん、と大我に背中を押されて俺は人混みの中へ走り出した。
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
