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「あれ、Aは？」
「なんかチャイム鳴ると同時に出て行ったけど、」
「ふーん？」
「…で、なに？」
「ああ、聞いたんでしょ」
疑問符も付けない大我に思い当たることは１つしか無くて、とりあえず頷く。
「本当なの？なんで、」
「なんで、って理由聞いてない？Aに」
「聞いてないよ。今日Aが来るのギリギリだったし、それとなく樹からは聞いた、けど」
そっか、と大我は呟くだけで会話が止まる。自分から話し掛けて来たくせに何も言わないのはなんかずるくないか？
「一応言っておくけど、別に高地の為に別れたわけじゃないからね」
「わかってるよ、そんなこと」
「あっそ。まあそれだけ言っておきたくて」
また後で、と大我は自分の席に戻って行った。自由人だよな、と考えているうちにまたチャイムが鳴った。Aも戻って来たけど授業担当の先生も前から入ってきたから話す時間はない。
次も、そのまた次も同じようにAはチャイムと同時に出て入って、明らかに避けられているような気がするのは気のせいじゃないだろう。
昼休みになれば話せるかな、なんて思ってたら樹と北斗にAは連れ出されて居ない。居ないから席借りちゃえって隣にはジェシーが座った。
「白石さん休みなの？」
「Aなら田中くんに連れていかれたよ」
「高地の次のライバルは樹だったりして」
「ジェシーうるさい」
「なんだよ、ご機嫌ナナメってやつ？ねえ大我」
「まあ高地があからさまに壁作ったのが原因じゃない？」
「だって…って、俺は別に壁なんか作ってねえよ」
とは言え自覚がないわけではない。友達だと言葉にすればするほどAと距離が出来た気がする。
「好きなら好きって言えばいいのに」
「そういうわけにはいかねえの。大体佐伯になにがわかるんだよ」
「下手に遠慮なんかしてAが優吾以外の人好きになったらどうすんの？例えば…松村くんとか」
「北斗？なんで北斗？」
「趣味が合うらしいよ？本の貸し借りしたり俺が一緒に登校する前までは北斗と一緒になること多かったみたいだし」
「マジ？高地チャンスだと思ったらピンチじゃん」
「松村くん格好いいしねえ」
「ダメダメ！サエは北斗に惚れちゃダメだからね！」
「心配しなくても大丈夫。北斗だって佐伯はないよ」
「ちょっと京本くん、それは失礼じゃない？」
ワイワイ騒ぐ３人に隠れてため息をつく。
好きとか嫌いとか関係なしに、ただ喋りたいって思うのはダメなんだろうか。
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
