隣の席の苦労人２ (ページ41)

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『え！？慎太郎が？』

「うん」

『そこは盲点だったな』

家に逃げるように帰って大我くんに帰りのことを報告するメッセージを送ったら電話がかかってきて詳しく話した。

「ジェシーくんにも怒られちゃった。私が悪いってわかってるんだけどさ」

『それでもいいって言ったのは俺だからAばかりが悪いわけじゃないよ。でも、慎太郎か…俺も慎太郎と話してみるよ』

「うん、ごめんね」

『慎太郎のことは俺に任せて。Aは高地をどう攻略するか考えないと』

「攻略って…無理だよ、私には」

『初めから無理って思ってたら何も出来ないよ。明日高地とちゃんと話すんだよ？チャンスはいっぱいあるでしょ？』

「でも、」

『ややこしくなった原因は俺にもあるし、応援はしないって言ったけどこのままでいいわけがない。伝えたいことはちゃんと自分の言葉で伝えないと』

わかった？と言われて返事をする前に電話は切れた。どうしよう、なんていえばいいんだろう？

「はあ、行きたくない」

遅刻ギリギリに校門を抜けてまだ賑やかな廊下を歩く。いつも通りに登校して優吾くんと話そうと思った。でも、何をどう話していいのか、ましてやハッキリと“友達”と言われた後にやっぱり好きです、なんて言えるわけがない。

彼もまた大我くんのことは、と怒るだろうか。

「あ、A。おはよう」

「…おはよう」

ぎこちない笑顔な優吾くん。そうさせているのは自分だという自覚はある。気まずい、だなんて感情を私がもつのは図々しいだろうか。

「あのさ！昨日のことなんだけど、樹も慎太郎もなにか勘違いしてたのかもだし、その…俺は気にしてないから」

「…うん、」

「ちゃんとAとは“友達”だからって樹にもあのあと話したし、慎太郎とも今朝…」

これが“牽制”ってやつなんだろうか。

どんどん壁を作られているのがわかる。まるで私の気持ちには見向きもしたくないみたいな、嘘だと思いたいみたいな。

「ごめんね、色々と…迷惑かけて」

「そんなことは、」

震える声はチャイムの音に助けられた。瞬きを我慢して涙が流れないように堪える。優吾くんが見えないように頬杖ついて顔を隠す。真っ白なワイシャツの袖にぽつりと涙が滲んだ。