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何て伝えようかずっと考えてた。頭の中で何度もシミュレーションしたけど、いざとなると言葉はすんなり出てこない。こういう時は北斗や樹の言葉のボキャブラリーが羨ましく思う。
「俺は、Aのことすごく好きだよ。誰にも負けないって自信あるくらいにはね」
「大我くん、私は…」
Aが何を言いたいかなんてわかってる。でも、聞きたくないから言葉を遮る。
「高地を好きなままでいいって言ったのは俺だけど、我が儘で欲張りな俺はそれがやっぱり嫌なんだ」
最初からわかってた。
Aが高地より俺を選ぶわけないって。
それでも僅かな可能性を信じてみたかった。
自分を、もっと好きになってもらいたかった。
「ごめんね、今日まで。すごく困らせたと思う」
「そんなこと…」
「Aのことは大好き…でも、俺だけを好きになってくれないAは好きじゃない」
これで最後にするから、最後の我が儘聞いてくれるかな？
「前みたいにまた某探偵仲間として、友達として仲良くしてくれる？」
「っ、もちろん」
「高地とのことは応援出来ないけど、邪魔もしない。でも、もし何か困ったことあれば俺はいつでも助けるから」
「うん。ありがとう」
「ふぅ…じゃあ、帰ろうか」
ここに来た時よりも、昨日までよりも少し離れた距離。だけどそれが居心地悪く感じない。きっとこれが俺たちが俺たちらしく居られる距離だったのかもしれないな。
駅のホームでAと分かれて電車に乗る。１人になった途端にぽっかりと空いた心の穴に気付く。車窓から見える景色がこんなにも色褪せて見えるのは初めてかもしれない。
最寄り駅で電車を降りる。歩き出してすぐに肩を叩かれ振り返る。
「ほら、やっぱり大我じゃん」
「高地と北斗？なんで、」
「樹と慎太郎はまた違う友達と予定あるって言ったから俺らだけ帰って来たんだ」
「そっか、」
「どうした？Aと喧嘩でもしたか？」
「そういうわけじゃないよ」
北斗は多分わかってるから複雑そうな表情を浮かべる。Aとのお付き合いは終わったんだよ、って高地に言ったら喜ぶかな。いや、高地のことだから心配しそうだよね。
「何があったかは教えてやらない。高地には絶対」
「はあ？北斗ならいいのかよ」
「北斗はね、わかってるもんね？」
「えっと、まあ俺の想像通りならそうなのかなってのはある」
「それ当たり、かな」
「そっか…おつかれさま」
「さっぱりわかんないんだけど」
「高地には内緒だよね、北斗？」
「そうだね」
ちょっとくらい高地を困らせてもバチは当たらないでしょ？
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
