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「じゃあちょっと横になって休んでてね」
経口補水液で水分補給してタオルに巻いた保冷剤で冷やしながらベッドに横になった。あまりお世話になることのない保健室だからか緊張はするが安心感があるのはなんでだろう。
「高地くんはこれまた派手に転んだわねえ」
「あはは、やっちゃいました」
「でも先生見てたけど凄く格好良かったわよ」
「えー？そうっすか？」
少し向こうで聴こえる会話を聞きながら目を閉じる。確かに、さっきの優吾くんは格好いいって思った。
やっぱり、好きだなって思うと同時に大我くんの顔が脳裏に浮かぶ。ちゃんとしなきゃ、と思いながら私の意識は夢の中に沈んでいった。
「彼女を守るヒーローって感じで。ふふ、青春ね」
俺の手足の傷を手当てしながら保健の先生が漫画みたいだなんて楽しそうに話す。
「ヒーローなんて、そんなもんじゃないです」
「ええ？そうなの？」
「Aのヒーローは俺じゃないんで」
俺はただの友達なんで、って自分で言ってこんなにも虚しい気持ちになる程に、俺はやっぱりAが好きなんだって改めて自覚する。
「若いうちに色んな恋を知るのも良い経験になるものよ。初恋が実ってそのままゴールインする人もいれば、幾つも失恋を体験して素敵な人と出会う人だっている。もちろん失恋しても一途に想い続けて実る人もいるわ」
「失恋して想い続けるのは、その、辛くないですか？本当に実ることなんてあるんですかね」
「楽しいばかりが恋じゃないから辛いことだってあるわよ。大事なのは自分の気持ちよ」
「自分の、気持ち？」
「自分の気持ちをしっかり大事にしないと恋は実らないものよ。まあ、絶対とは言えないけど……はい、おしまい！」
「ありがとうございました」
少し大きめの絆創膏が大袈裟にも見えるけど傷は全然痛くない。
「もう閉会式も終わる時間ね。私救護所の片付け行かないとだから高地くんここに残っててくれる？」
「え、」
「白石さん１人にするのも心配でしょ？あ、先生居ないからって邪な気持ち持っちゃダメよ？」
「はっ!?何言って、」
「冗談よ。高地くんを信頼してお願いしてるんだから」
よろしくね、と笑って出て行った先生はもしかして俺の気持ちに気付いていたのだろうか。
「A大丈夫？開けるよ？」
仕切りカーテンの向こうに声をかけるも返事はなく、そっとカーテンを開けた。すやすや眠る姿に安堵し、横の椅子に座った。
「好きだよ、A」
俺の気持ちが届くことはあるのかな。
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
