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人間驚くと涙が引っ込むとはよく聞く話で、先ほどまで止めどなく流れていた涙はぴたりと止まった。
「ねえ、お前らの用事って白石さん泣かせること？」
いつも笑顔と言っても過言ではない高地くんの真顔を通り越した表情はさっきまでの田中くんよりも怖い。
「高地ちょっと落ち着けって」
「慎太郎は黙ってて。俺は樹と北斗に聞いてんの」
森本くんが高地くんの肩に手を置けば振り払われ、すっかりお手上げ状態な彼にジェシーくんも共に困り顔。
「ちょっと話してただけだよ。別に俺も樹も白石さんが嫌がるようなことは一切してない」
「じゃあなんで、」
「あー…それは説明出来ないっていうか、ねえ？白石ちゃん」
「えっ、うん。ただお話してた、というか私の話を聞いてもらってただけで、相談とも言うのかな。その、感極まってしまったといいますか」
まさか内容そのものを伝えるわけにもいかず、ざっくりとした説明を３人で頷き合えば高地くんの表情も少しだけ、ほんの少しだけ和らいだ。
「本当にそれだけ？樹に意地悪されたとかない？」
「っ、大丈夫だよ。ね、ねえ松村くん？」
「うん、そこは俺が一緒だったから安心して」
「…まあ北斗が言うなら」
田中くんのイメージどうなってんの、って思ったけどこれで乗り切れるならいっか。
「なーんか俺的には納得いかねえけど」
「樹、ここは合わせとけって」
「ったく…あ！慎太郎たち良いもん食ってんじゃん！なあ北斗」
「は？ああ！そうだな。俺らもコンビニ行く？」
「そうしよ。じゃ、高地は白石ちゃん頼むわ」
「「はい？」」
「そういやジェシー、俺宿題のプリント忘れたから一緒に学校戻ってくんね？」
「マジかよ！あ、俺も体操着忘れたわ！」
「お前らまで？」
いやいや、ちょっと待って？こんなあからさまなことある？皆さん棒読みにも程がある。じゃあね！と田中くんに至ってはウインクまでしちゃって。残された空間を若干気まずく思ったけど、高地くんはすっかりお馴染みの笑顔とまではいかないけど教室でよく見る表情に戻っていた。
「とりあえず、帰ろうか」
「そうだね」
駅までの道のりを私に合わせてゆっくりと歩いてくれる。
「本当に大丈夫だった？あいつら見た目怖いけど悪い奴らじゃないんだ。ただこう、不器用というか」
「んふふ、大丈夫だよ。みんな仲良いよね」
「まあ、悪くはないかな」
「いつも１人だからさ、私。だからちょっと羨ましい」
「そう？うるさいだけだよ」
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
