74 ページ27
「ねえ大我」
「ん？」
「今日終わったらどうするつもり？」
借り物競走に出場するための列に並んでまさかのジェシーと同じレースだったようで隣にしゃがむ。
「どうするって……ああ、佐伯から聞いたのか」
「まさか期間決めてるなんて知らなかったから」
「…知らないままで良かったのに」
「高地は、知ってるの？」
「さあ？でも世話好きな北斗か樹が言ってるかもね」
Aとのお付き合いは今日が期限。お試しと銘打った少し前の俺にバカだな、と言いたい。
でも今日までは本当に楽しくてすごく幸せだった。
「みんな高地の味方って感じだよね」
「そんなことはない、けど」
「わかってるよ。俺が横取りしたようなものだし」
正々堂々、なんてものじゃなかった。後ろめたい気持ちがなかったわけではない。素直に高地を応援しようって思っていたはずなのに、Aと話したりする時間が増える度に気持ちに変化が起きた。
「俺は大我のおかげもあって今があるし、恋は早い者勝ちとも思う。高地のことも応援してたけど、大我とも友達だから」
「…ジェシーは優しいね」
優しすぎて心配になる、そう呟けば眉を下げて笑うジェシー。
「位置について…よーい、」
パァン！
お題が書いてある紙まで走る。隣を走っていたジェシーの方が先に紙を見る。俺は最後に残ったものを手に中身を見る。
“恋人または好きな人”
運に見放されなかったのか、はたまた神様のイタズラなのか。向かう場所はジェシーと同じ。
「高地！来て！」
「俺！？」
「っ、A！」
「え、嘘でしょ？」
先を走る高地とジェシーに追い付けないけれどせめて２位にはなりたい。Aと手を繋いで走れば樹と慎太郎の囃す声が背中から聴こえる。
存分に視線を浴びながらゴールして係員に紙を指さして見せて判定をもらう。笑顔で丸印の札を上げてくれて“２”と書かれた列に並ぶ。
「あ、A大丈夫？」
「うん。ちょっとビックリしたけど。まさか本当にお題出るなんて思わなかったよ」
「そうだね。でも、俺は引けて良かったよ」
「大我が２位とか凄いじゃん。ね、高地」
「そうだね。俺ら戻ってもいいらしいから先に行くわ。Aも行こ」
「うん。じゃあ大我くん、またあとでね」
離された手になま暖かな風が吹く。笑いながら話す２人の後ろ姿を見ていたくなくて目を反らす。
「ジェシーさ、どうするって聞いたじゃん？」
「うん？」
「俺ね、最初から決めてたんだよ」
答えはずっと変わらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
