73 ページ26
スタートラインに立って初めて気付く。障害物競走の目玉と言っても過言ではない、粉の中からあめ玉を見つけるというものの横に見える６人組。
なんであそこに固まってるの！？
周りの女の子の視線が自分たちに向いてるって気付いてないのかな、なんて考えていれば無情にも鳴るスタートの合図。
走って平均台を渡ってネットをくぐって、また走って。ぐるぐるバットや係員とじゃんけんしたり…ここまでは３番手くらい。
「A頑張って」
大我くんの声援を聞いて粉まみれのバッドの中に顔を突っ込む。ふー、と息を吹きかけてみてもあめ玉は見つからない。なるべく汚れたくはないけど早々にここを立ち去りたい。
「白石ちゃん頑張れ」
「端っこ探してみたら？」
「もう顔で探す勢いでやった方が早いよ？」
「お前らやめろって京本に言われただろ」
「A焦らないで探してみ？」
「ねえ、俺がさっき言ったの聞いてた？」
ああ、サエもこの感じを味わったのだろうか。アドバイスしてくれているのはありがたいけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。森本くんに言われた通り思い切り顔を動かせばあめ玉にぶつかり、口に加えて走る。
「行けー白石ちゃん！」
「樹！だから京本が、」
顔についた粉を手で払いながらゴールへ向かう。残念ながら４位で先にゴールしていたサエとは違う列に並ぶ。
競技が終わってサエと一緒に水道のある場所で粉を落とす。一緒にレースを走っていた人たちも集まってるから順番待ち。
「なんかAの時賑やかだったね」
「もう恥ずかしくて仕方なかったよ」
「まあまあ、私たちはもう出番終わりだしゆっくり楽しもうよ」
「そうだね」
応援席に戻れば大我くんとジェシーくんの姿だけなくて４人が喋っている。彼らは自分たちの所に居なくてもいいのか？と思いつつも他の人たちも自由に過ごしているから特に気にしなくていいみたい。
「田中くんたちの声めちゃくちゃ聞こえたよ」
「マジ！？」
「マジ。恥ずかしかった」
ね？とサエと頷きあう。とはいえ何も声援がないよりかは良かったけど、というのは心の中に留めておく。
「ごめんね？俺は止めてたんだけど、」
「松村くんもなかなか、うん」
「え！？ウソだ！」
「うん、冗談だよ」
「もーやだ。白石さんまで俺のこといじるんだ」
松村くんとは結構話す機会があるから軽く冗談を言えるくらいには仲良くなった。
「あ、そろそろジェシーと大我だ」
「よっしゃ！みんなで盛り上げようぜ！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
