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「まーた見てる」
「なに、佐伯。文句ある？」
「こわっ！Aが居ないと京本くんは別人みたいだね」
授業前にAと高地が喋っているのなんて見慣れた光景だった。ちょっと前まではそれに俺も佐伯も参加していたのに、席替えという避けられないイベントのせいで俺らは離ればなれだ。それでもお試しと言えど付き合っているのだから登下校は一緒にしてるけど、最近のAはどこか元気がないようにも見える。
「ねえ、何か知ってるんでしょ」
「なにが？」
「Aのこと。最近なんか変なんだけど」
「本人に聞けばいいのに」
「もし別れたいとか言われたら無理。立ち直れない」
「じゃあ優吾に聞けば？」
「は？高地は知ってるの？なんで？」
高地が知ってて俺は知らないの？Aのことなのに？やっぱりAは俺より高地が好きなんだろうか。
「んー、Aは京本くんには言いたくないって言ってたんだけど」
「俺には言えないのに高地には言えるの？」
「いや優吾は意図せず知られたというか」
「だったら教えてよ。佐伯から聞いたって言わないから」
「うーん、でもなあ…」
先生が来たから大人しく黒板の方を向く。少ししたら高地とAが注意されてみんなの注目が教室の後ろにいく。その時に佐伯から折り畳まれたルーズリーフをこっそり渡された。
ノートに問題を解くフリをして中身を読む。Aが他のクラスや先輩の女子から色々言われているらしい。目に見える嫌がらせは受けてないようだけど結構ストレスを感じていると。
お試しお付き合いを提案した時にAが心配していたことだった。中学生の時に嫌な思いをしたことも一緒に聞いた。
俺が守る、なんて格好いいこと言って結局俺は何も出来ていない。
授業に集中なんて出来るわけなく放課後に。いつもは真っ先にAのとこに行くけど、帰る準備すら遅れているから周りの席を立つ音ばかり聞こえる。
「大我くん？」
「ごめん、もうちょっと待って」
Aから来てくれるって些細なことが嬉しくて、でもちゃんと話さないとなって思うと上手く言葉に出来ない気がする。
「じゃあね、また明日」
「優吾くん、サエもまた明日！」
高地に向ける笑顔だって前と変わった？高地は今どう思ってるの？Aは誰を想っているの？
気付けば教室には誰も居なくてAと２人きり。帰ろ、と言ったAの手を掴む。
「Aは、まだ高地が好き？」
ああ、質問間違えたな。そんな顔しないでよ。
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
