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ただなんとなく今日は早く行こうかなって思った。昨日の大我が気になって、Aのことが気になって。北斗がいつも使ってる時間より１本遅い電車に乗った。あわよくばAが居ないかな、なんて期待したけどそんなことはなかった。
教室には居るってのはわかってたから少し駆け足で階段を上って息をドアの前で整えてから入ろうとしたら聞こえてきた声。
「本当に俺のこと、好き？」
大我の声だってすぐにわかった。
「好き、だよ」
それに続く自分の好きな人の、Aの声に頭が真っ白になる。肩に掛けてた鞄を落として我に返った俺は走った。
ああ、やっぱりダメだった。
俺じゃやっぱり…
「ほく、とっ、」
「高地？どうしたの？」
悔しい気持ちと切ない気持ちでいっぱいなのに、さっきのことがぐるぐると頭を回る。
「…京本と話したの？」
「ううん。Aが大我のこと好きって言ってるの聞こえちゃって、ビックリして逃げてきちゃった」
あー、教室戻り辛いな、今日から俺このクラスになろうかな、なんて言ってれば大我が隣に立っていた。
「高地、あのさ、俺昨日Aに告白した」
「そう、Aと付き合ったの？」
「う、ん。そうなんだけど、」
「良かったじゃん。前からお似合いだと思ってたし、俺のことは別に気にしないで」
Aが大我を選んだなら俺にはどうすることも出来ない。
この気持ちを忘れるしかない。
「さっきは驚いちゃっただけだし、今すぐは無理かもだけど潔く諦めるからさ」
心配すんな、って笑ってみせたけど俺ちゃんと笑えてる？笑顔が特技な俺だからいけてるはず。
「A待ってるでしょ。早く戻りなよ」
「高地は、」
「俺は…時間までには戻るからさ。適当に誤魔化しておいてよ」
「、わかった」
大我が教室に戻ったのを見届けてから北斗の机に腕と頭を乗せてしゃがみこむ。失恋したというのに苦しいはずなのに不思議なことに涙は出てこない。
「高地、その、大丈夫？」
「うん。はあー、俺ってタイミング悪い男なのかな。っていうか大我が前もって教えてくれてたらこうはなってなかったのに」
「本当に諦めるの？」
「好きでいても辛いだけじゃん。友達って思えるように頑張る」
「でも、」
「大我で良かった、とも思ってるんだよね。あいつならAも笑っていられるから。でもさ、やっぱりキツいな目の当たりにすると。俺笑えてたよね？」
「うん…がんばったね、高地」
「俺は何もしてない、何も出来てないよ」
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作者名：いか | 作成日時：2023年5月20日 19時
