Heartbreaker 【吉沢亮】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:21,695 hit

5 ページ5

ロビーに戻ると、そこには僕と彼女が部屋に入るよりも沢山の女性が集まっていた。

熱を帯びた視線でじっとりと舐め回すように僕たちを吟味している。

次の客を探すべく、ひと通り女性達を見ていくと、その中に明らかに違うオーラを放つ女性、というよりかはまだ少女に近い齢であろう客を見つけた。

僕はいつもお金を沢山払ってくれそうな人ばかりを相手に取るが、その時はなぜかその幼い雰囲気を醸し出す彼女に声をかけていた。

『お客様、当店は初めてですか？』

「え、あっ、はい。」

彼女は緊張した面持ちで話を続ける。

「実は友達に連れられて一緒に来てみたんですが、
彼女は面識のありそうな男性を見つけると私を一人残して、エレベーターに乗って別のフロアに行ってしまったようで...」

どうやら彼女の友達とやらはここでの遊び方に慣れているらしい。

『そうだったんですね、あ、すみません、申し遅れました。私、ツバサと申します。どうぞご贔屓に。』

僕はいつもこういった丁寧な口調で関係を始める。

そこから相手の特性や好みを分析し、そのキャラになりきる。

その様はカメレオンのようだ、と評されることもあったのだ。

「ご丁寧にどうも、私はAと申します。ここの方はみんなお綺麗な顔をされていますね。」

『ええ、ありがとうございます。A様もお綺麗ですよ。』

そう言うと彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。

その笑みは他の客とは全く違って穢れのない純粋無垢なもので、僕の心を刺激した。

『では、私達も行きましょう。』

「ええ、わたしは勝手がわからないのでツバサさんについて行きます。」

他の客なんかとは違う、真っ白で誰も踏み入れたことがないんだ。

そんなのは一目瞭然で、あまりにも儚くて思わず壊してしまいそうだ。

彼女がなんの疑いもなく僕についてくる様子を見るとあの時の自分を思い出した。