弱者の鬼ごっこ【鬼滅の刃】

肆話 童磨side ページ7

『無惨様から頂いたものです。肌身離さず持っているようにと言われました…』



それを聞いて俺は驚いた。



まさか、あの無惨様がねぇ…



彼女の首元の布紐は、無惨様の所有物であることを示しているものだった。
それだけ、彼女に対する独占欲がよほど強いのだろう。



俺が最初に見つけたのに…



彼女が猗窩座殿とこの部屋を去って行った後、珍しく黒死牟殿に声をかけられた。



「童磨…あの人間のことを…どれだけ知っている？」



そりゃ、たくさん知ってるよ？
でも＿＿








「ねぇ、童磨？」



堕姫に声をかけられ、意識が戻る。



「なんだい？」



「あんた、話聞いてた？」



「Aの過去だろう？そうだねぇ…」



万世極楽教の教祖としてたくさんの人間を救ってきたつもりだけれど、彼女だけは救いようのない可哀想な可哀想な人間だ。
それでも彼女は、自分が可哀想であることを否定し、弱さを否定し、自分を否定した。強くあることをこんなにも必死に強いのだと主張するもんだから、見ていて飽きない存在だった。



「俺ですら救えない信者だよ。あの子は、いつも奪われてばかりでね。鬼殺隊に入って、やっと守れる力を持てたと思ったら、またしても奪われて。あの子は本当に可哀想だよ。だって、Aの大切なものはいつだって＿







"人間"が奪うからね」



流石の鬼でもこの話を聞いて、同情する表情が二つ、三つ見られた。



まぁ、俺は同情なんてしないけどね！

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