*毒が広がっていく前に (ページ17)

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「スニョア～。もう、飲み過ぎだってば」
HS「あれ～？Aが2人に見える」
「もぉ～！」

わかりやすく酔っ払っているスニョン。まあ、元々酒は強くねえみたいだから仕方ないのかも知んねえけど。Aに支えられながら共倒れしそうな2人にため息をついて、スニョンに肩を貸した。
その間にAに会計に行かせると、スニョンはジフナ～と俺にくっついてきて、ウザいと一蹴して近付いてきた顔を押し戻した。

HS「ジフナってさ～。小さいくせに力あるんだよな」
WZ「うるせえ」
HS「…普通、小さいのってハンデになると思うんだけどなあ」
WZ「あ？」
HS「あ、聞こえた？何でもないから」

ばっちり聞こえてるわ。いらっとして舌打ちをしたら、スニョンは俺に寄りかかったまま、ちっともハンデにならねえんだもん、なんて小さな声で呟いて視線を逸らした。

HS「なんなの、おまえ。全然かっこよくてムカつく」
WZ「どの口が言ってんだよ。かっこいいのはおまえだろ」
HS「何が負けてんのかな～…俺、おまえに、」
WZ「……」
HS「ほんと、Aが2人いたらよかったのに…」

そんなスニョンの呟きはしっかりと俺の耳に届いていて。その言葉の意味も、理解してしまった。
ああこいつ…俺たちの関係気付いてんじゃん、って。気付いてて、何も言わねえんじゃん。

WZ「Aが2人？絶対やだね」
HS「…なんでだよ、」
WZ「1人だから、魅力的なんだろ。2人いたら、特別感が無くなる」
HS「…そういうとこだよ、マジで」

Aが2人なんて、考えただけで嫌になる。俺の知らないところで、俺の知らないAがいるなんてたまらなく嫌だ。Aのことは全部知りたいし、あんなに…俺を惑わすAはひとりで十分だ。

HS「…いま手を引いたら、許してやるけど」
WZ「なんだそれ。どういう意味？」
HS「おまえって昔からそう。興味ない振りして、涼しい顔をして…俺の欲しいもん全部奪ってく」
WZ「…さあ。記憶にない」

奪っていく、なんてスニョンの言葉に思い当たることはなかったけど。
そう返した俺に、スニョンの空気はわかりやすく不機嫌になって。いつもニコニコしている姿からは想像できない不機嫌顔になった。

残念だけど、許してもらえなくてもいいから、Aが欲しいんだよ、俺は。

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