ROUND UP -紫蘭- (ページ6)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:17,322 hit

黄檗ページ6

慎 side

最寄駅に着くアナウンスで目を開けた。改札を出ると、雨の香りがする。外は土砂降りだった。

鞄の中に手を入れて傘を探すが、やはり傘はない。

コンビニで傘買って帰るか…と思った矢先、

？？「そこのかっこいいお兄さん、私の傘に入って行かれませんか？」

と、声をかけられた。見上げるとそこには、

『えっ…？…びっくりした、真衣か。迎えにきてくれたの？』

愛おしくて堪らない彼女の姿があった。

普段はWEBデザイナーの仕事をしている彼女。不規則な勤務形態の俺に不満を漏らしたことのない彼女は、土曜日だというのに俺の分のご飯を作って、わざわざ迎えにまで来てくれている。

真衣「慎、私の家に傘置きっぱなしだからきっと持ってないだろうなぁと思って。濡れて帰ってきて、風邪でも引いたら大変でしょ？」

『ありがとう、助かる。俺が傘持つよ。帰ろっか。』

真衣「うん！今日のご飯、自信作なの、きっと慎も喜ぶよ〜。」

隣で彼女はそう言って嬉しそうに笑っている。

『何作ってくれたの？』

真衣「うーん、それは帰ってからのお楽しみかな〜。」

この笑顔を見ると、この幸せが続きますようにと願わずにはいられない。

俺は職業柄、いつ死んでもおかしくはないと思っている。"秘密警察"になってからは、大切な人を作ろうとしなかった。

けど、彼女に初めて出会った時、身体中を電気が走るような感覚に襲われて。あぁ、この人といたい。そう思った。

_______ 今回の事件、ターゲットは名だたる実業家ばかりだが、彼女はそのターゲットになり得る。_______

絶対に、この笑顔を守り抜く。

雨雲の間から、ほんの少しのぞいた月に、そう誓った。