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つい、流れで。
こんな風にサラッと伝える予定ではなかった。
もっとこう、雰囲気を作って、きちんと、誠実に。
若は少し後悔している。


「……」

「……」


その割には、好きだと伝えてしまったことに対して心臓はバクバクと音を鳴らしていた。
Aから見た今の若は、とてもクールに見えるが内心は全くそうではない。
彼は必死に繕っている。


「…質問しても?」

「どうぞ」

「いつからなの?その…」


自分では言いにくいのか、口をぱくぱくさせるだけのAに愛しさを感じる。
なんとなく察しはつく。


「去年ですね」

「きょ…!?」

「いつかに貴方が跡部さんのところに来た時です、夏休み中に」


若がまだ中学一年生だった時の頃。
生徒会の仕事で景吾に用があったAは、テニスコートに訪れた。
灼熱の太陽の下。照り返しも強く、暑さで苛立ちが募っていた。


『跡部くん』

『Aじゃねえか、なんでこんなとこにいやがる』

『文化祭の企画書、夏休み前に渡すの忘れてて』


爽やかな風の如く、彼女は現れた。
結われていない、黒くて艶のある髪がなびいている。
恋とは、やはり突然訪れるもので。


「……一目惚れですよ、要は」

「…」

「そういうキャラじゃないと思ったでしょう」

「いや、まあ…いや……」

「自分から聞いておいて照れすぎですね」


道路を歩くローファーの音が、コツコツと辺りに響く。
今自分の隣を歩いている彼は、こんなにも気持ちを言葉にして伝えてくれている。
Aは何かあたたかいものを感じていた。


「日吉くん、あの」

「なんですか」

「私、日吉くんとなら一緒に住んでも良いと思った」

「!?…また急に何言ってるんですか」

「だから…えーっと…」


自分もそうしたい。
お返しの気持ちを言葉に乗せようと、Aは言いたいことを整理してからゆっくりと口を開いた。


「日吉くんと一緒に過ごして、日吉くんのこと、もっと、ちゃんと、知りたい…私まだなんにも知らないから」

「…!…何か幻滅することだってあるかもしれないんですよ」

「それも全部!いつか日吉くんの気持ちに答えられるように!」

「……」


人前で発表するよりも、緊張しているかもしれない。
Aの顔はまた赤く、指先は冷えていた。
一生懸命に話す彼女を優しい眼差しで若は見つめている。


「……す、好きになっちゃうことだって、あっ…あるかも、しれないし………」


小さな声で彼女が呟いたそれを、若は聞き逃さなかった。

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設定タグ:テニスの王子様 , 日吉若   
作品ジャンル:恋愛
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よっちゃんイカ(プロフ) - コメント失礼します!続きが気になりますぅ! (2021年10月15日 12時) (レス) @page36 id: bd5008a586 (このIDを非表示/違反報告)
一琳 - やっぱり好きだーー!いつ見てもすきだー、明日学年末テストだー、いやだー!『しつこいですよ。先輩』って小説書いてます!暇なら読んでください!(急な告知)(笑) (2020年2月27日 0時) (レス) id: d3ba7ac342 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 黒瀬さん» アア〜!!!ありがとうございます嬉しいです!!!私も好きです!(え!?)ありがとうございます! (2020年2月20日 7時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - す、好きです〜〜!!!!(突然の告白)キュンキュン通り越してギュンギュンしてます…むり…体調に気をつけて、更新頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 一琳さん» ありがとうございます!最高なんて言葉もったいないですが、嬉しすぎるので素直に大喜びしています!!!!!! (2020年2月14日 0時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無し | 作成日時:2020年1月23日 2時

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