25 ページ25
｢ただいま戻りましたー｣
｢おかえりAちゃん｣
｢ひよっ…若くん帰ってきてますか？｣
｢自分の部屋で寝てるわよ｣
｢あ…良かった〜…｣
若の母が優しく出迎えてくれる。
まだ日吉家に帰ってくるのは少し緊張して、ただいま！と元気に言える勇気はない。
｢ふふ、Aちゃんまだ緊張してるでしょ｣
｢あはは……そうですね｣
｢若のことも日吉くんって呼んでるんでしょ！｣
｢家の中でその呼び方だとややこしくなっちゃうのは分かってるんですけど…｣
｢初々しいわね、可愛い〜！｣
女性は、いつになっても恋バナが好きらしい。
若の母はニッコニコの笑顔でそう言い、Aの背中を押して歩く。
｢あ、あの｣
｢Aちゃんの顔みたら元気になると思うから、さ、どうぞどうぞ｣
｢へへ…ありがとうございます｣
嘘でもそう言ってくれたことが嬉しくて、変な笑い方をしてしまった。
Aはローファーを脱いで、廊下を静かに歩く。
彼の事だ。また意地を張りまくって放課後の部活にもしかしたら出ているのではないかと心配したが、大人しく早退しているようだった。
｢ただいまー…｣
｢…………｣
｢……寝てる｣
呼吸で膨らんだりしぼんだりする細い身体と、規則正しい寝息。
羨ましくなるほど小さな顔と、薄そうな瞼。
初めて会ったあの時と同じように、美しいと感じさせられた。
｢…｣
若の横に三角座りをする。
ぼんやりと考えるのは、まだ分かっていないあの理由。
こんな風に思いたくはないが、許嫁というのだから何か無理を強いられるのは承知である。ただ、それに耐えられないなんてことになれば彼から離れなければならなくなるかもしれない。
｢好きなのになあ…｣
Aはそう呟いて、若の頬を軽くつつく。
彼もまだ14だ。自分より年下なのだから、何かあれば守ってあげなければならない。
と、そこまで考えたところでこれは好意ではなく親心では？と思う。
｢……｣
しばらくしてからAは頬を叩いて、立ち上がった。
｢……よし｣
彼を起こさないように部屋の外へ出る。
許嫁の理由を聞きに行こうと、強い足取りで若の母の元へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 126人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よっちゃんイカ(プロフ) - コメント失礼します！続きが気になりますぅ！ (2021年10月15日 12時) (
レス) @page36 id: bd5008a586 (このIDを非表示/違反報告)
一琳 - やっぱり好きだーー！いつ見てもすきだー、明日学年末テストだー、いやだー！『しつこいですよ。先輩』って小説書いてます！暇なら読んでください！(急な告知)(笑) (2020年2月27日 0時) (レス) id: d3ba7ac342 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 黒瀬さん» アア〜！！！ありがとうございます嬉しいです！！！私も好きです！(え！？)ありがとうございます！ (2020年2月20日 7時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - す、好きです〜〜！！！！(突然の告白)キュンキュン通り越してギュンギュンしてます…むり…体調に気をつけて、更新頑張ってください！！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 一琳さん» ありがとうございます！最高なんて言葉もったいないですが、嬉しすぎるので素直に大喜びしています！！！！！！ (2020年2月14日 0時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名無し | 作成日時：2020年1月23日 2時
