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Aに背を向け、壁を見つめながららしくないことを言ったと後悔している若をつんつんとつつく指。
「ちょっと…なんですか」
「今絶対可愛い顔してるから見たいなと思って…」
「してませんよ」
「そうなの?」
「してません」
「でも耳赤い…」
「してませんって」
「ふふ、ごめん、っふ」
勇気を出して素直に言ってくれたことに、Aはとても嬉しくなって、口角が勝手に上がってしまう。
「早く寝てくださいよ」
「うん」
外はまだ雨が続いていた。
雷は止んで、電気もつくようになった。
恐怖心はいつの間にか、今の空気に溶けてすっかり消えている。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
電気を消して目を閉じると、心地良い雨音が耳に入る。
他にも体と布団が擦れる音と寝息が聞こえる。あとは、隣の彼の存在感。
やはりまだ緊張はするものの、どこか安心感がある。一緒に寝るというのはこういうことなのかとAは改めてそう思った。
「…………日吉くん、寝た?」
「…起きてますけど」
お互い、目は閉じたまま。
口だけを動かして会話をする。
「岳人くんにね、許嫁になった理由が分からないのはおかしいんじゃないかって言われて」
「……」
「それで、日吉くんに聞こうって。気が進まなかったからああやって抵抗してたんだけど…あ、だからって岳人くんが悪いわけじゃないからね」
「…分かってますよ」
「なんで私が日吉くんの許嫁になったか分かる?」
「……俺も知りませんよ、アンタと会ったあの時に初めて聞きましたから」
「…あー…そうだったっけ…」
あの時とは、Aが何も聞かされずに母と日吉親子の元へ向かった日のことである。
そういえばそうだったかとAは記憶を掘り起こしていた。
「…そっか…」
「…アンタが今何を思ってるか分かりませんけど」
「うん」
「アンタと離れる気はありませんから」
「…うお…」
彼を好きだと気付いてからというもの、感情の大きさが変わった気がする。
ひとつひとつがとても大きい。可愛いが振り切ったり、かっこいいが振り切ったり。
どうしようもなくなる感じ。
「……なんですか…」
「好きだなと思って…」
「……恥ずかしい人ですね、全く」
「ふふ、いいよ、それで」
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よっちゃんイカ(プロフ) - コメント失礼します!続きが気になりますぅ! (2021年10月15日 12時) (レス) @page36 id: bd5008a586 (このIDを非表示/違反報告)
一琳 - やっぱり好きだーー!いつ見てもすきだー、明日学年末テストだー、いやだー!『しつこいですよ。先輩』って小説書いてます!暇なら読んでください!(急な告知)(笑) (2020年2月27日 0時) (レス) id: d3ba7ac342 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 黒瀬さん» アア〜!!!ありがとうございます嬉しいです!!!私も好きです!(え!?)ありがとうございます! (2020年2月20日 7時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - す、好きです〜〜!!!!(突然の告白)キュンキュン通り越してギュンギュンしてます…むり…体調に気をつけて、更新頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 一琳さん» ありがとうございます!最高なんて言葉もったいないですが、嬉しすぎるので素直に大喜びしています!!!!!! (2020年2月14日 0時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し | 作成日時:2020年1月23日 2時