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「はあ…」
今日5回目のため息をついた。
昨日の夜は、若に言われた通りなんとなく話の流れる方向に合わせてやり過ごした。
つまり今の若とAの関係は、ざっくり言えば旦那と嫁ということになっている。
「……」
1人、机に突っ伏した。思ったより勢いよくいってしまい、机に額を打った音が響いたのは知らないふりをする。
昼休みが始まったばかりだが、今日は食べる気にはならず食堂にも足が向かない。
もうこのまま寝てしまおうと目をつぶった時だった。
「跡部さん」
「こんなところまで何の用だ日吉」
教室のドアが開く音がした。
その次に耳に飛んできたのは、どこかで聞き覚えのある声。
Aは目をつぶって伏せたまま、一生懸命記憶を辿る。
「今日の部活なんですが」
少しだけクセのある、高めの声。
Aはその声の正体が分かった瞬間、それはもう勢い良く顔をあげた。
「……っ…え」
彼だ。昨日顔を合わせたばかりの彼がここにいる。
氷帝学園の制服を身にまとっていた。
Aは自分の着ているブレザーと、若のブレザーを交互に見た。同じ色だ。
ということは、Aと若は同じ学校に通っていたということになる。
「ああ、分かった。終わったらすぐに来い、いいな」
「はい」
「…?…おい、どこ行くんだよ」
「Aさんのところに」
これだけこの学園で生活をしてきて、一度くらいは見かけてもおかしくないはずだがAには若を見かけた記憶が一切無かった。
見かけていたとしてもその時は全く知らない赤の他人なのだから、そう思うことは当たり前である。
「…どうも」
「!?ど、どうも…」
若は歩み寄って、Aに声をかける。
予想以上に肩を揺らす彼女に、若は少しだけ笑いそうになる。
跡部くんに用があるんじゃなかったの?と言いたげな彼女のその目はぱっちりとしていて、長くて細い睫毛が生えていた。
「…どうしたんですか?」
「………この話は、貴方がどうしても嫌なら断ってくれて構わないんですが」
「……はあ」
「……」
「……?」
続きを言い出さない若の顔を、不思議そうに見つめる。
ほんのちょっと赤くなっている頬にAは気付いた。多分、本当に言いづらい話なのだろう。
「……母が、ウチで住め、と」
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よっちゃんイカ(プロフ) - コメント失礼します!続きが気になりますぅ! (2021年10月15日 12時) (レス) @page36 id: bd5008a586 (このIDを非表示/違反報告)
一琳 - やっぱり好きだーー!いつ見てもすきだー、明日学年末テストだー、いやだー!『しつこいですよ。先輩』って小説書いてます!暇なら読んでください!(急な告知)(笑) (2020年2月27日 0時) (レス) id: d3ba7ac342 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 黒瀬さん» アア〜!!!ありがとうございます嬉しいです!!!私も好きです!(え!?)ありがとうございます! (2020年2月20日 7時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - す、好きです〜〜!!!!(突然の告白)キュンキュン通り越してギュンギュンしてます…むり…体調に気をつけて、更新頑張ってください!! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 一琳さん» ありがとうございます!最高なんて言葉もったいないですが、嬉しすぎるので素直に大喜びしています!!!!!! (2020年2月14日 0時) (レス) id: b107436f56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し | 作成日時:2020年1月23日 2時