その2 五 ページ9
「なに、簡単なことよ。それはね……」
学校に着くと既に僕の教室までの通路にあの二人が待ち受けていた。
と言っても、ただ二人廊下で喋っているだけで別に僕を待っていたわけではない。
朝から目に毒だ。さっさと二人の横を通り過ぎようとしたとき、ふと彼女の方に目をやる。
僕の目は彼女の髪、仕草、服装と自然に見まわしていた。
「どうしたんだよ。なんか用でもあるのか?」
僕の視線に気付いた晴也が訝し気に尋ねてきた。
しまった。僕としたことがあろうことか友達の彼女をじろじろ見てしまうなんて。
彼女のことが気になっていたが、それをそのままこいつに伝えるのはどうだろう。
やはり少し気が引ける。
「いやあ、ただ、よく飽きないでいるなあって思って」
適当に話を流そうと、いつも二人でいる相手を茶化す様に返した。
まあ、いつも思ってたことだしね。
僕はどうも心にも無いことを言葉に出すのが苦手なのだ。
こうやって事実を交えないととてもじゃないけど言えない。
僕の言葉にビックリしたように晴也は目をパチクリさせながら言い放った。
「飽きるも何も、人と一緒にいるのにそんなのないだろ」
意外だった。晴也は彼女といるようになってだらしないというイメージが付いてしまっていたから、こんな言葉が返ってくるとは予想外だ。
そうか、まあ翌々考えてみれば好きな人と毎日喋れるというのは羨ましい限りだ。
僕もまだまだ思慮が浅いな。よりによって晴也に教えられるなんて。
「てか、お前、まさかそんな冷やかしを言うために来たのかよ」
「ああ、朝からお前の顔みたらなんか言ってやりたくなってさ」
呆れた様に尋ねる晴也に僕はなんだか小恥ずかしい気持ちになって小馬鹿にするように言った。
彼女はというと、僕らの会話に入り辛いのか黙ったまま隣で身体を晴也の方に向け、時折僕の顔をちらりと見てはすぐに視線を晴也に戻し、そしてたまに何とか会話に入ろうと口を小さく開けるも結局何も喋らないまま口を結んでを繰り返していた。
「じゃあ、僕はそろそろ。教室で皆が待ってるから」
ふと窓から見えるグラウンドの時計に目をやると授業開始まで15分を指していた。
そろそろ行かないと小言を言われそうな気がする。
僕らはいつも朝に集まる。そのことを知っている晴也は軽く見送ってくれた。(といって僕の教室まで10mも無いが)
去り際に彼女に目をやる。
内巻きのロングヘアは艶やかで美しく、僕に向かい小さく手を振る仕草は可愛らしかった。
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八舞(プロフ) - MANA☆さん» コメントありがとうございます。いつもと違う感じのを作ったのでお気に召して頂けたなら幸いです (2016年9月23日 10時) (レス) id: 6e6efe270e (このIDを非表示/違反報告)
MANA☆ - コメント失礼します!占ツクでは珍しくまともな小説でとっても面白いです!!更新頑張って下さい(*^^*) (2016年9月15日 21時) (レス) id: 474683ec26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八真生 | 作成日時:2016年8月24日 16時