その2 九 ページ13
「ねえ、何か言ってよ！」
黙ったままの僕に痺れを切らしたように彼女が声を荒げる。
確かに黙ったままではこの状況は変わらない。
しかし、なんと言えばいいのだろう。
『君みたいな人間が嫌いなんだ』
と言うのは気が引けるし、姉さんの事を考えると口が裂けても言えない。
かといって『君の事が気になってたんだ』なんて言えば間違いなく勘違いされるだろう。
すると彼女は目尻を下げ優しい顔をして再び口を開いた。
「ねえ、私あなたのこと嫌いじゃないの。
むしろ好きよ。あなた温厚だし女の子に優しいしね。それに皆から面白いってよく聞くし。
彼女いないのが信じられないくらい良い人だと思うよ。
私、晴也君に出逢ってなかったらあなたが好きだったと思うの。
でもね、私には晴也君が……」
「黙れよ」
思わず声を上げた。聞くに堪えなかったのだ。
今思えば、僕が女の子に向かってこれほど怒りを露わにしたのは後にも先にもこの時だけだったと思う。
彼女は、僕の行動が意外だったのかビクリと体を震わすとキュッと口を閉じて僕の方を上目遣いで見つめた。
そんな仕草でさえも僕は苛立たしくてついそれに言葉を続けた。
「確かに君は可愛い。それに物知りだ。僕たち男子中学生がどういう女の子を好きかって事についてね。仕草、髪型、匂い、喋り方もすべて完璧だよ。
実際、晴也以外にも君の事を好きな奴はいるはずだ。でも、君があいつといるのは自分をよく見せるためだろ。
僕ってどうもそういうのを敏感に感じ取っちゃう質なんだ。
晴也は剽軽だし馬鹿だけど人が良いからあれで結構モテることも僕は知ってる。
だからこそ君はあいつに目を付けたんだ。
君が最初からその髪型じゃなくてツインテールにしていたのも僕にはどうしてかわかるよ。
晴也の為だろ。男は彼女が自分好みに変わっていくのに無意識に快感を覚えるからそうしたんだ。違う？」
彼女は無言だった。
顔はさっきより青ざめていて目は僕の方を向いていない。
「君が態々僕にさっきのことを言った理由もわかるよ。
僕が晴也にそのことを喋るのを狙ってたんだ。そうすれば晴也は君が誰かに取られるんじゃないかって思うだろうし、僕を褒めたもの自分をよく見せるために。
そしてあわよくば僕も取り込もうと考えてたんだろ。実際、あんなこと言われたら男は簡単に君の事を好きになるよ」
もはや彼女の顔色ですらどうでもよくなった僕は一人で喋り続けた。
僕とにかくこの纏わりつく様な不快感を拭いたかったのだ。
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八舞(プロフ) - MANA☆さん» コメントありがとうございます。いつもと違う感じのを作ったのでお気に召して頂けたなら幸いです (2016年9月23日 10時) (
レス) id: 6e6efe270e (このIDを非表示/違反報告)
MANA☆ - コメント失礼します!占ツクでは珍しくまともな小説でとっても面白いです!!更新頑張って下さい(*^^*) (2016年9月15日 21時) (レス) id: 474683ec26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：八真生 | 作成日時：2016年8月24日 16時
