その2 七 ページ11
「簡単なことよ。こうちゃんはね、あたしに似て良い人が嫌いなの」
「えっ?」
予想だにしない答えに素っ頓狂な声を上げてパッと姉さんの顔を見る。
先程の液のおかげか艶々とした頬が部屋の電気を反射させ眩しい。
「良い人って言っても色々あるのよ。気の利く人だったり。人に良い顔をする人だったり。
本人にそういう意思があろうがなかろうが、なんかそういう人見ると嫌な気持ちになっちゃうの。例えば、食事会で自分からサラダ取り分けちゃう子とか、男に好みのタイプ聞いてそれを意識しちゃう子とか」
姉さんはそういうとクローゼットの方へ足を進めた。
「確かに、気が弱くてついついそうしちゃうって子もいるでしょうけど、大半は気に入られるためだったりしてなんだかいけ好かないのよ」
扉を開けると大きな収納ケースが三つその横には靴の箱がいくつも積み上げられていた。
ハンガーに掛かった服だけでも20着はあるのではないだろうか。
ほんとにあんなにも服が必要なのか甚だ疑問だ。
「でも、それってあの子と何か関係あるの?」
「関係大ありよ。なんか、こうちゃんって察しは良いし聡いのに肝心なところ抜けてるのね」
あたしそういうとこ心配よと何度目かになる言葉を言いながら、収納ケースを開けて服を選び始める。
僕のどこが抜けているというのだろうか。
姉さんの発言に疑問を禁じ得ないが、それより今は姉さんの言う僕がイイヒトが嫌いということの方が重要だった。
僕はそんな捻くれ者なのだろうか。
確かに、たまに人と合わない時はあったが、それは個性で片付けられる範囲だと思っていた。
しかし、『イイヒトが嫌い』これはそうはいかない。
「つまりね。こうちゃんはそうやって人に気に入られようとする人が嫌いなのよ。
彼女、髪型を変えたって言ったでしょ。ツインテールって子供っぽいってよく言われるの。それを男ウケする内巻きロングに変えたりとか、彼に気に入って欲しいのを無意識に感じ取っちゃったのよ。
でも別にどうってことないわ。潔癖症の人っているでしょ?そんなものよ。その対象がそういう人っていうだけ」
僕は唖然とした。
だとしたら、僕はそんなどうでもいいことを無意識に嫌ってしまうどうしようもない男ではないか。
僕はすっかりショックを受けてしまった。
自分自身こんな捻くれた人間だとは思っていなかったのだ。
しかし、姉さんが言うことが間違っていた時は無い。
つまり、姉さんの言う通り
僕は『イイヒト』が嫌いだ。
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八舞(プロフ) - MANA☆さん» コメントありがとうございます。いつもと違う感じのを作ったのでお気に召して頂けたなら幸いです (2016年9月23日 10時) (レス) id: 6e6efe270e (このIDを非表示/違反報告)
MANA☆ - コメント失礼します!占ツクでは珍しくまともな小説でとっても面白いです!!更新頑張って下さい(*^^*) (2016年9月15日 21時) (レス) id: 474683ec26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八真生 | 作成日時:2016年8月24日 16時