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「そんなことより!今日もそれ、つけてくれてるんだね」
「う、うん。変じゃないかな」
山の天気よりも早く話題が移る。
なおちゃんが言っているのは、私の三つ編みをとめている可愛らしい髪飾りのことだ。ヘアゴムに差し込むタイプのもので、金の細い枠で縁取られた花の形をしている。幸いにもうちの学校の校則はゆるい方なので、身につけていても怒られたことはない。
「似合ってるよー!やっぱり私の見立てに狂いはなかったね、かわいい!」
「そんな、なおちゃんのセンスが素敵だからだよ」
「へへ、Aちゃんに似合うのを必死に探したからそう言ってもらえるとすっごく嬉しいな!」
そう、これはなおちゃんから誕生日プレゼントでもらったものだ。普段自分では買わないものだから、もらったときはとても嬉しかった。使うのがもったいない、と思って部屋で飾っていたら、使われない方が悲しいと言われてしまったこともあるので今はわりと頻繁に身につけている。おかげで私は彼女の笑顔をたくさん拝むことができる。
「でもこんなかわいいのつけてたらますますAちゃんの魅力が増すし、男の子も放っておかないよね〜」
「へっ!?」
「なぁに、その反応!まさか好きな人でもいるの?」
好きな人。流石に初恋もまだと言うほどの恋愛初心者ではないけれど、今はそんな人いないはずだ。ぽやん、と頭に浮かんだ背中を慌てて打ち消す。
「いない!いないよ」
「ふぅん? あれ、そういえばなんでいきなりバレー部のことなんて……まさか」
「わーーーー?!!!?! 待ってまって話が飛躍してるから一旦ストップ!」
バクバクと心臓が音を立てる。大きな声を出してしまって、周りの人に変な目で見られていたらどうしよう。顔があつい。ほっぺたが溶けそうだ。
「A、ちょっといい……」
「ぅわーー!?」
「え!!?な、なんだよ、どうした?」
肩にぽん、と何かが置かれて思わず後ろを振り返ると、目を見開いた矢巾くんと目が合った。なんでこんなときに!しかもよりによってバレー部だ。
「な、なんでもない!用事でもあった?」
「ああ、委員会会議の時間が変更になったから念の為言いに来た。これプリントな。……おい、大丈夫か?」
「大丈夫です!連絡ありがとう!」
はやくここから立ち去ってほしい、と切に願いながらプリントを受け取る。さもないと……
「ねぇ、矢巾くん!ちょっと聞きた……むぐっ!?」
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作者名:わたぬき | 作成日時:2021年1月11日 23時