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他の生徒より頭がひとつかふたつ、飛び抜けて高い身長。
そのてっぺんにはくるくると跳ねた短めのくせっ毛。
大人びた顔立ちは眠たげな三白眼と、筋が通った高めの鼻、ちょっと間延びした印象を覚えるアヒル口で構成されている。
極めつけに、一度見れば目が離せない、真っ黒な瞳孔。
自然に人を惹きつけて、まっすぐ視線を合わせると何かを見透かされそうな、そんな瞳がこちらをジッと見つめていた。
なぜかはやる鼓動を抑えながら、私は図書委員の責務を果たそうとした。それさえも、なんだかぎこちない動きになりそうで、頬の筋肉に力をこめた。
｢御用件は何でしょうか？｣
｢……本の貸出、お願いできるかな｣
｢はい！ 貸出ですね、少々お待ちください｣
図書カードの有無を訪ねると、彼は制服のポケットに入っていたパスケースから実物を丁寧に取り出した。それを受け取り、機械で情報を読み取ったあと、画面とカードの名前が一致しているか確認する。
｢松川一静さん……っと。ありがとうございます、お返しします｣
私が両手でカードを差し出すと、彼は口元に笑みを浮かべたまま、また丁寧にパスケースにしまった。
物を大事にする人なのかな。直感的にそう思ったけれど、深く考えている暇はない。今は目の前の仕事が優先だ。
簡単に手続きを済ませて数冊の本をまとめて差し出すと、彼は軽々と片手で持ち上げる。
｢ありがとう、また来るね｣
ひらひら、と空いた方の手を振って、ゆるやかに図書室を後にしていった。
ふぅ、と肩から力が抜ける。なんだか不思議な人だったなぁ。彼が去った後の入口のドアをを見つめながら、私はつい先ほどまでのことを思い返す。
最初に視界に入った時はちょっと怖かったけど、対応は丁寧で、きちんと挨拶もしてくれたし。でも私、見つめられるような変なこと、何かしたかな。
あんなに印象的な見た目だから、多分どこかで見たことがあったら覚えてるはずなんだけどな。
頭に霧がかかったみたいにモヤモヤして、半ば唸りながら座って考え込んでいると、視線の先で入口の扉が開く。
｢うっす、Aお疲れ〜｣
｢……矢巾く〜ん〜？｣
｢悪ぃわりぃ。ちょっと掃除が長引いちゃって｣
申し訳なさそうに笑う彼。鞄を肩に背負いながら室内に入ってきたのは同じクラスで図書委員仲間の矢巾秀くんだった。
矢巾くんはロッカーに鞄を入れると、カウンターの後ろの椅子に逆向きに座った。
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作者名：わたぬき | 作成日時：2021年1月11日 23時
