【満員御礼】31 days to vanish【非ログ・３L可】

ある研究者の手紙 ページ24

September 1,2022
Dear Clarice,

How are you doing(元気でやってる)？…前回会ってからもう２年ぐらい経つね。日本にもそろそろ馴染んできて，有意義な日々を過ごしているよ。あ，君の活躍もニュースで見たよ。この前発表してた論文，革新的だった。

今日，ニュース見た？日本ではどのテレビ局でもこれで持ちきりだったけど，アメリカはどうなんだろう。「消滅病」で消えた，「桜花」の寮生たちの話なんだけど。

実は，私はこの子達の診断医だったらしいんだ。全く覚えていないけれどね。
私の研究室の扉にでかでかとメモが貼ってあったんだ。彼らのことを忘れた私へ，ってね。それで寮と学校に電話してみた。

見事に全員，忘れていたよ。彼らを一番近くで見ていた教師も，養護教諭も，彼らと同じ部活だった者も，クラスメイトも，家族や地域の住民も，友達も，そして恋をしていた女子生徒も。
本当，怖い話だ。

薬の開発が間に合わなかったことも残念だ。まだ見込みのあるものすら見つけ出していなかったから仕方がないことではあるけどね。

それで，寮の担当だった教師から資料として生徒たちがつけていた日記や遺言書の一部のコピーをもらったんだ。あらかじめ許可は貰っていたらしい，と言っていたよ。

ただ，私の専門外だから自分ではどうにもできないし，興味も持てないんだ。だから君へ送る。どれも当たり障りのないことではあるけど，心理学者からしたら何かの役に立つものかもしれないからね。「死ぬ」でなく「消える」に直面した子どもの記録は貴重だろう？

あぁ，そうだ。一個だけ，興味深い記述があったんだ。誰が書いたものかは分からないと一番上に貼ってあったメモだ。たった一言。たった一言，こう書いてあった。

「31 days to vanish(消滅まで31日)」

I look forward to seeing you again.
Alex Ager

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