彼らが消えた次の日。 ページ13
雲一つない晴天だった。
スマホを見ながら歩いてくる高校生、お喋りをする中学生たち。
鼻歌を歌い、スキップしながら歩いてくる女の子に、鬼ごっこをしている男の子たち。
夏休みが終わり、佐倉学園のいつもの日常が戻ってきた。
「おーい、急げよお前ら〜！」
教師の声。慌てて生徒たちが走っていく。
チャイムが鳴った。
＊＊＊＊＊
カバン片付けが終わり、宿題もすべて提出完了。
はーっ、と息を吐いた榎本莉子に、友達の明が声をかけてきた。
「莉子ってさ、好きな人いるの？」
「ん〜、いないかなぁ」
「え、マジ？絶対いると思ってた‼」
「ごめんね、いないんだ」
「イケメン好きそうだなぁ、莉子って」
「何それ、私は…………」
「莉子？どうしたの？」
「あ！ごめん、ぼーっとしてた。えーと、なんの話だっけ？…あ、やっぱ私、イケメン好きかもしれない」
「だよね〜、当たった」
何か、空白がある気がする。
しかしそれが何か思いだすことはできず、莉子は諦めておしゃべりに専念することにした。
＊＊＊＊＊
「これって誰のか知ってる奴いる？俺ボケたかな？」
「ごめん、私も分かんない…」
「僕も。聞いてみたら？」
「分かった。」
佐久間涼太は大きく頷き、
「せんせー！この机って誰の？」
と叫んだ。
「うるさ……、どれ？」
とため息を吐きながら返す担任に、机を指さす。
「これ。こいつの隣って誰もいなかっただろ、転校生でも来るの？」
「……ごめん、分からない。誰かが間違えて置いたのかもしれないな。とりあえずそのまま置いといて、あとで片づけるから」
はーい、と元気よく返事を返した涼太は、ふと首をかしげた。
「でも、この班って人足りてた気がするんだよな…」
＊＊＊＊＊
久しぶりの学校に戸惑ってしまうのか、今日は保健室の扉がよく開く。
「桔梗先生、いらっしゃいますか？」
「いるよ。どうした？」
「頭が痛くて…少しベットを貸してもらってもいいでしょうか？」
「そうか…熱はなさそうだし、ちょっと休憩すればいいと思う。酷くなったら呼んでくれるか？」
「分かりました。じゃあ、このベットで寝かせてもら」
「ちょ、待て！そこは」
なぜか口をついて出た声に、自分で困惑する。
「あ、誰か寝てたりするんですか？ごめんなさい」
「いや、そういうわけじゃないんだ。いつも使われてたような気がしたんだ、ごめんな。大丈夫だからそこで寝てくれ」
桔梗は慌ててそう言い、顔を洗いに行くことにした。
続く
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