月光と皇帝『この世界で』【野坂悠馬】 (ページ1)

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月夜に輝く星の下でページ1

ここは少し前までは笑顔や笑い声などが飛び交う国だった……それなのに、もうすっかり聞こえなくなってしまった。いま聞こえるのは苦しみに満ちた声だけ。僕はそんな国をこの手で変えらなければならない。

「どうしたものかな……」

机の上にある本をパタリと閉じた。そして窓の外に目をやる。外は暗く……昼なのにまるで夜のように暗い。これが前までは、青い空が見え笑い声などが飛び交っていたというのだから目を疑ってしまう。
コンコン
軽くドアがノックされる音がした。きっと彼だろうそう思い「いいよ」と返事をした。

「ノサカさん……そろそろお時間です。」

ノックをしてきた彼は僕の側近のセイヤだ。いつも僕の隣で戦ってくれている。そして、そんなセイヤの手には黒いファイルが握られていた。
　あぁ…これか、と僕はセイヤからそのファイルを受け取った。このファイルには、今日襲う国や村が記入されている。僕達が住んでいるこの国は『王帝月ノ宮国』そして、アレスと言ったシステムにより魔力が倍増すると共に体調面や、寿命が縮んでしまうと言った大きな欠点がある。このアレスシステムを使い僕らは色々な国や村を潰してきた。中には僕らを「悪魔」と、呼んだものもいた。

「今日も…か、」

パラパラとページを捲った。そこには『アベルス』と、書かれていた。ここは以前にセイヤと下見をしに来た事があった。

「ここは以前に…」

「あぁ…でも、アレスの命令だからね……仕方のない事だ」

セイヤは「はい。」
と、短めな返事をした。戦場から戻り暗くなった道を歩く。

「お疲れ様でしたノサカさん。今日の敵はなかなか手ごわかったですね」

「ああ…こちらの戦力の大半がやられたからね……でもまだ僕達の敵じゃない。」

今回の戦いの時と、前に戦った時の死んだ人の数に比べればどうってことない。そう自分に言い聞かせた。
すると、王帝月宮国に向かっている最中に突如激しい頭痛にあってしまった。こんな時に限って薬は置いてきてしまっている。僕はセイヤに先に帰っているようにだけ伝え、月の光が差し込む湖の所に行った。月の光は僕達、闇系の魔族の力を抑えてくれる。だが、頭痛は増すばかりだ。

「っ……」

ついに立てられなくなってしまいその場に倒れた。すると、暗闇からどこか懐かしいものを感じた。天国かな？と思い目覚めると、そこには美しい青い瞳を輝かせた長い髪の女性が「気がついた？」と心配そうに見ていた