【赤】純情を売りにしています【男主】 (ページ35)

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『…なによあの男』

「見りゃわかるでしょ？うちのメンバーですよ」

『そうじゃなくて！…ああもう憎たらしい！』

ダイキにはああ言ったけど、この女のためにジュースの一杯も付き合ってやるのがうざったく思えたので、マンションの敷地内にある小さな公園にとりあえず収まった。

『あの子がアンタの心を動かしたの』

「そうだったらなんですか？」

『私は女なんだよ？彼は男。男同士なんてつまらないに決まってるじゃない。

なんで私を選ばないわけ？』

呆れて言葉が出なかった。
この女はどこまで自意識過剰を演じるつもりなのだろうか？

つくづく人を見る目がなかったと過去の自分を呪う。
遊びたかったとはいえ慎重に人は選ぶべきだった。

「男じゃないあなたにそんなことが分かるわけ無いでしょ。

オレは男がいいとか女がいいとかガワで決めてないんですよ。
もちろんあなたみたいに職業で決めてもない。

あなたはただ "職業:アイドルの男" が好きなだけ。オレの中身なんか見てへんやないですか。

そんな女に誰が惚れるか」

ちょっと言いすぎかな？とは思った。
思っただけ。

『馬鹿なんじゃないの！？

アンタもそのうち捨てられるのよ！！！』

女は顔を真っ赤にしてオレに訴えかける。

ああそう。まあ、捨てられたときはその時よね。
だって捨てられて当然のクズだもん、オレ。

「あのさー、あんた。オレにこだわりすぎ。

オレのどこがいいかなんて知ったこっちゃないんだけどさー、ほんまにオレより良い人なんていっぱいおるんやからもっと誠実な人探しなよ。

それならヒステリックにならずに済むんだから…

これ、飲んで少しは頭冷やして。考え直せばオレがただのクズだって気づくよ。

じゃあな」

適当に思いついた文章を話しながら、自販機で名前も見ず買った飲み物を女に渡す。

ほんまはこんなもん無駄金でしかないから嫌やけど、これで許してくれってほんの気持ち。
これで許されるなんて思ってへんけど。

さ、ダイキの居る家に帰ろ。