鈍色に染まって ページ32
遊んでいた頃の記憶も記録も全部消した方がお互いのためだと思ったし、オレもそうしたかったから関係は全て切った、つもり。切れていると思う。
仕事で会わなきゃならん人もけっこーいたし、最低限の連絡は取れるようにしたり、これからの連絡はマネージャーを介すようにしたり、オレにしてみれば頑張った方や思う。
こういう配慮、ちょっと難しいから色々考えたんやで。
だってダイキを心配させるわけにはいかんやろ。
ドラマやら映画やらなんやらでただでさえ忙しいのに、オレのことで面倒ごと増やすのはちょっと嫌。
ごたごたとか、話し合いとか、めんどっちーの苦手やねん。
「ヘーワ主義。大事やんね〜」
特に意味のない独り言を呟くと、ポケットに入れていたスマホが無音で震えだす。
確認すると、見覚えのあるような無いような女の名前。
誰やろ？スタッフさん？前の現場のチーフやろか？
…ほんなら、苗字だけかフルネームのはずやけど。
設定めんどくてサボったか、過去のオレ。
とりあえず出ることにした。
《 お疲れ様です、深見です 》
《 やっと出た。なんでアンタ連絡先もLINEもブロックするわけ？ 》
声とこの横暴な態度を聞いて思い出した。
いつの頃かに相手した女だ。
…今さらなんや、この人とそんなに接点はなかったと思うけど。
わざわざ他のスタッフさんに連絡先を聞いたのだろうか？
この口ぶり、そんなに急ぎの用事があるとは思えない。
《 いや…特に必要性も感じひんかったんで 》
《 はぁ…？なんでそんな他人みたいな喋り方するの？ 》
《 他人やないですか 》
我ながら冷たい返しだとは思う。
だけど、別に温かい返しをする必要はないと思った。
《 私たち付き合ってるんじゃないの？！ 》
《 …えーと、どこから勘違いしてる？ 》
こりゃあ、面倒なことになったなぁ…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひるた | 作成日時：2023年7月2日 0時
