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重「Aがこんなこと言い出すなんて、ほんま明日あられでも降るんちゃうか」
「いやぁ、いつもダイキに迷惑かけてるからたまにはええかなって」
重「んなことないけどな」
高速道路を駆け抜けながら、車のスピードとはうってかわって緩慢な会話をしている。
なんとなく垂れ流しているテレビでは、性別についての問題を何人かの大人たちが討論していた。
…こんなの、気にするだけ無駄や思うけどな。
「ダイキはどう思う？性差別について」
重「え？…んー…」
Aがいきなりそんな質問をしてきた。
政治とか社会問題とか、そういうの興味なさそうやのに。
なんか今日は、特段変な感じ。
重「こうやって頭ごなしに批判してる人は、神経質な人やなーってなるな。
お互いを尊重し合ってないから、こんな意見が出てくるんかなって思う、
別にそこまで言うほどのことじゃなくない？批判したいだけに見える」
「ほんま、ごもっともですわ」
納得したようにAは笑った。
「ダイキはさ、もしオレが女のコやったら好きになってた？」
窓の外を眺めながら、なんの気なしみたいに言う。
一瞬、俺は狼狽えた。
危な、いま運転中やで。
好きな人にそんなん言われたら、意味わからんくなる。
男のオマエでも、好きやのに。
重「…女の子やったら、俺ら出会えとらんよ、多分」
「そっかー、確かにそやんな」
こんなつまらないことしか言えないのも、Aのせい。
人の気持ちなんて、興味のない素振りをしているのに。
今日はなぜだか、人が変わったように追求してくる。
…変なもんでも、食うたんか。
いつもならちょちょいと避けて、知らんぷりして、俺には関係ありませんって顔すんのに。
ハンドルを握る手が妙に汗ばむ。
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作者名：ひるた | 作成日時：2023年7月2日 0時
