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「淳太」



お互いに無言を貫き、慰霊碑の掃除もあらかた片付き始めたころ、Aは声を絞り出すようにして発した。



「ん?」



「淳太が帰る日まで、俺と一緒に遊んでくれる?」



「当たり前やん、」



いつぞやにも似たようなことを言われたような。
なんでAはここまで未来の約束を確認するんやろう。
執着してるようにも思える。



いちばん大切な約束を破られてしまったことがあるから、やろうな。



「この街で、毎年やってるお祭りがあるの、俺と一緒に行かない…?」



「祭り?そんなんあったんや」



「うん、そんな大きいものじゃないけどね」



そう言って、Aは少し離れたところにあった掲示板を指差した。
あたりは暗いが、掲示板をはみ出すほどに大きなポスターには「じんべい祭」とでかでかと書かれているのが見える。



じんべい…
海の生き物の名前だ。
Aがいつも着ている水玉模様のTシャツのような斑点があるジンベイザメ。



やはりこの街は海と生きているのだ。



「もちろん、一緒に行こや」



「やったぁ、久しぶりのお祭りだ」



「久しぶりなん?」



口頭では疑問を含んだように言ったが、実際はそうだろうなと思った。
彼はろくに外に出ず、最低限人との交流を絶っていたのだ。



幸せな空気があふれる祭りの会場になんか、行ける勇気も元気もなかったろう。
俺が勝手に思ってるだけやけど、祭りは平和の象徴やし。
彼の心は戦争のように黒く荒んでいたのだ。



「昔は家族で行くのが恒例だったんだけどね。



二人が亡くなってからはめっきり行かなくなっちゃった」



「ほんなら、俺が初めてのお祭り友達や」



「なにそれー」



ただ、Aが初めて祭りに行く友達が俺、というだけなのに。
そこに希少価値を見出してしまう。



こんなにも魅力的で可憐なAのことを深く知っている人間がが俺だけなんて、なんだか申し訳なささえ孕んでくる。



「ほんなら、祭りの日の夜に集合やな」



「夜…そっか、お祭りだから夜に外出してもいいんだ!」



「せやで、流星に秘密で窓から出入りせんでもよくなるんやで」



「え、淳太がなんで流星知ってるの?」



まだバレてないと思ってたのが可愛くて、Aの頭をこつんと小突く。



「ほなら、あの海に集合やで、おっけー?」



「わかった、忘れないでよ!」



「忘れへんわ!」



忘れるわけないやろ、こんな大切な約束。

追憶にはならぬよに→←・



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ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…!毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします! (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます!!どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます! (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひるた | 作成日時:2023年3月12日 22時

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