・ ページ4
「えっと…」
元気なおばあちゃんの圧に負け、俺は思わず後ずさりをしてしまう。
「淳太が驚いとる、少しは落ち着け」
「ごめんねぇ、淳太くん。ばあちゃんだよ、昔一回だけ会ったことあるんだけど」
「ん〜…すみません、あんまり覚えてなくて」
会ったかどうかも曖昧なので、それとなく濁した。
「そりゃそうや、生まれたときに会ったっきりやねんから」
「それが最後やったねぇ、まあ、上がって上がって。
お腹空いたでしょ。そうめんあるから、好きなだけ食べて」
おとんは二人の様子を微笑みながら見つめたあと、挨拶回りをしてくると言って出ていった。
部屋に案内されるなり、適当に荷物を置いて、手洗ってらっしゃいと言われた。
その言葉通り、教えてもらった洗面所に向かう。
「内装、綺麗なぁ…」
築何十年、下手したら何百年という代物だろうが、中はとても綺麗にされている。
どちらかが綺麗好きの人なんやろうと思うくらいには、掃除が行き届いていた。
「洗面所、わかった？」
「はい、大丈夫でした」
「あらぁ、敬語なんて使わんといて。
ばあちゃんじいちゃんって気軽に呼んで。これから一緒に暮らすんやから」
「う、ん、ありがとう…ございます？」
そう諭されるも、俺的には初めましての人たちなので、むず痒い。
でも、血の繋がった祖父祖母に対して敬語は変やなと自己暗示し、慣れるよう積極的に話してみることにした。
「そうめんいっぱい茹でてしまったんやけど、淳太くん食べる人？」
「人並みには食べれるほう、かな」
「ほんなら、好きなだけ食べてね」
どん、と大きな食卓にそうめんが置かれる。
うーん、ざっと五人前はあるかな。
普段こんなに食べない身としては、荷が重い気がする。
おとんがさっき言ってた、出してくれたもんは食べてやってくれ、ってこういうこと？
大量に出されるから完食しろってか。
「あいつ、またこんなに出したんか」
ふすまが開けられ、じいちゃんが顔を覗き込ませる。
「…じいちゃんも、食べる？」
「そうめんか。食べ切れんだろ、じいちゃんが手伝ってやる」
少し離れてはいるが、じいちゃんは隣に座り、そうめんを箸で取り始めた。
ぶっきらぼうで言葉は強いけど、優しくて笑顔が華やかなところは、おとんに似ているなと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (
レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…！毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします！ (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます！！どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます！ (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひるた | 作成日時：2023年3月12日 22時
