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波打つ音と、微かに聞こえる風の声に起こされ、布団の中でぼーっと考えていた。


おとんとおかんがある日を境に居らんなるって、どんな苦しみなんやろう。



痛いんやろか、悲しいんやろか、虚しいんやろか。
…全部、なんかな。



想像すらもできないことを考えていると、俺よりも小さい背中で、俺よりも大きなものを抱えているAを抱きしめてやりたくなった。



俺はドの付く鈍感でも、純粋なヒロインでもないから、
自分の気持ちくらい分かっとんねん、もう



この救いたい想いが、友情のみから来るものじゃないってこと。



どこか見て見ぬふりをして、蓋をしていた気持ちと向き合ってみる。
ええねん、付き合うとか、そんなんしたいわけやないから。



頭だけで考えてくよくよしててもしゃあないからと、鉛のように重い俺体を勢いよく持ち上げる。



兎にも角にも、Aに関する情報は入れたほうがよさそうや。
神ちゃんに連絡を入れて、こどもハウスに向かうことにした。



職員さんなら、Aのこと詳しく知ってそうや。
気温が上がってきた頃、兵庫から持ってきたお菓子を申し訳程度にかばんに詰め、記憶の道をたどる。



刺すような炎天下に、やはり海はスポットライトを当てられたスターのようにこれでもかとアピールしてくる。



セミのような喧しささえ感じる海を無視して、こどもハウスの前までやってきた。
一応、Aにはバレたくないのだけれど、今の俺って完全に…見られたらおしまいやんな。



まあ、変装なんてできる暑さやないし、ええか。



入り口らしきところまで来たけれど、それらしい人が見つからんかった。
まだ誰もおらんのかなー、と様子をうかがっていると、中に人影が見えた。



「あの!ここの職員さん、ですか?」



「おおぉ!危ない危ない、職員やけども」



衝動的に動いた体は、少しばかり勢いが強かった。
段差につまづき、転びかけた俺を背の高い職員さんらしき男性は笑いながら心配してくれた。



「どうしたん、こんな時間に」



「僕、Aくんの友達なんですけど…」



「あ、A?呼んでこようか?」



「違うんです!職員さんに少しお話を聞きたくて」



Aを呼びに行こうとする職員さんを必死に止めて、訳を話す。



「わかった。俺まだやることあるから、突き当りの部屋で待ってて、麦茶持ってく」



客間と書かれた部屋を指差して、彼はどこかへと消えてしまった。

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ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…!毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします! (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます!!どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます! (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひるた | 作成日時:2023年3月12日 22時

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