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席に戻りジュースを飲んでいると、すぐに料理が届いた。



「すごい美味しそう…!」



「冷めないうちに食べーや」



Aは数日ぶりに飯にありつくかのように勢いよく口に入れた。
食べ方が汚いというわけではなかったのだが、野性的だった。



この華奢な体、このありつく様、夜に抜け出す習慣、外食への知識のなさ…



思わず、虐待されているのか?と勘ぐってしまう。
そんなこと、悪い勘違いであってほしいと思う。



実際、彼に身体的虐待は見えないし…
いやでも、身体的な暴力だけが虐待というわけではない。



「A…ご飯食うとるん?」



「うん。食べてるよ。あんまり入らない体質だからたくさんは食べられないけど」



「そっか。両親はなにしてるん?」



「なに…してるっけ、聞いたことないや」



Aは食事の手は止めず、俺のほうは見て答えた。



まるで迷子になった小学生と話している気分になる。
高校生で、親の職業を理解していないことなどあるのだろうか?



とたんに寒気がした。
薄々気づいていた、彼への疑問が際立った。



ふとさっきじいちゃんと話していたクジラブカ様の伝説を思い出した。
どうしてか頭の中で空想のクジラブカ様が海をかき回しながら泳いでいる。



怖じ気出す俺を見て、何を思ったのかAは食べる手を止め、ゆっくりとその手を膝に置いた。



「あの、引かないで、欲しいんだけどさ…



俺、中学から、あんまり学校通えてなくて、高校もそこまで行けてないんだ。



だから、頭も悪いし、友達作るのも下手だし、お父さんとお母さんとも話せてないし、世間知らずなの、俺



ごめん、こんなこと急に…言うの遅くなったらそれだけ言い出すのが怖くなると思って」



ぎこちない笑顔を浮かべてそう言った。



幼い子どものような振る舞いも、友達ができて喜んでいた姿も、すべてはこのことからだったのか。



悪い勘違いで震えていた背中に一気に安堵が伝わり、緊張が解ける。



「そんなことでAのこと嫌いになったりせぇへんし。



学校通わなくても、友達できんくても、頭悪くても、俺が友達やん。



学校が全てなわけ無いやろ。」

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ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…!毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします! (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます!!どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます! (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひるた | 作成日時:2023年3月12日 22時

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