指南するは かの海 ページ12
「あら、淳太くん、おはよう」
「おはよう、ばあちゃん」
「昨日どうやった？海、綺麗やったでしょ？」
「全然景色がちゃうくてびっくりしました。ほんまに綺麗やった。」
夜遅くまで出掛けていたことに罪悪感を募らせつつ、奔放な性格のばあちゃんたちと街を興味深く思う。
俺の思っていた田舎とはちょっと違うから。
この人との距離感の近さもそうやけど、特筆して田舎というわけでもないのに(少し足を伸ばせば大きいモールだってあるのに)、なんだかここは閉鎖的で、かつ開放的だ。
この街だけ、別世界みたいや。
「そうやろ〜！あれがこの街一番の名物なんだよ。
あの海を訪れると幸せが舞い込む、なんていう言い伝えもあるくらいなのよ。」
言い伝えかぁ。
確かに、古来からある神話やら、伝説を残す石碑、なんてものがありそうなほど、あの海は洗練されているように感じる。
実際、思わぬ出会いがあったし。
そういうまことしやかな話を信じるタイプではないが、
あながち間違っていないのかもしれない。
「淳太くんも何かいいことあった？」
「どうやろう。あったかも」
なにやらにやにやと得意げな顔つきで訊いてくるばあちゃんに対して、俺は言葉を濁した。
Aとのことは、二人だけの秘密のような気がして。
「気に入ってくれてよかったよ〜。好きなときにいつでも行ってらっしゃいな。
朝ごはん食べたらじいちゃんにも挨拶してやって。縁側にいるだろうから。」
「うん、わかった」
太陽の日差しと、かすかな潮の香りに包まれて、優雅に朝食を摂った。
いつぶりだろうか、こんな悠々自適でマイペースでいられる朝は。
焦燥感に駆られる日々が遠ざかっている。
ああ、こんなにのんびりしていると課題が終わらないや。
でもこんな日があってもいいよな、と無意識に自分の腕を抱いた。
食器を片付けて、ばあちゃんに言われたとおり縁側に行ってみると、じいちゃんが湯呑を片手に海を眺めていた。
「じいちゃん、おはよう」
「淳太か。おはよう、ここ座るか？」
じいちゃんの横に座るようとんとん、と手で催促されたので、流されるように隣に座った。
表情一つ変えず、ただ無言で海を見つめるじいちゃんが沈黙を破った。
「あの海にはな、神様がおるんだよ」
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ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (
レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…！毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします！ (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます！！どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます！ (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひるた | 作成日時：2023年3月12日 22時
