検索窓
今日:20 hit、昨日:12 hit、合計:7,615 hit

ページ11

カーテンから差し込む眩い光に起こされ、目を開ける。



昨晩は帰宅するなり、慣れない座敷を歩いて風呂場に行き、すぐさま体を流した。
タオルで拭いたものの、海水がベタベタして気持ちが悪かったというのもあるが、昔からの習慣なのでほとんど無意識だったような気がする。



窓の外を眺めると、海は私を見てと言わんばかりに輝いていた。
昨日の静かで淑女のような雰囲気はどこにもなかった。



ほんまにAが居たんかさえも、曖昧になりそうや。



もしかしたら、イマジナリーフレンドってやつかも知れん。



将来に迷って、心を病んだ結果生まれた、自分の中だけの存在…ありえないと言い切れないところが恐ろしい。



でもきっと、彼は本物やと思う。



根拠はないし、昨日の記憶が確かかどうかも、眠ってしまった以上分からない。
今夜、彼が夜の海に来るかどうかさえも。



嘘であっても、彼の存在を否定したくはない。



嘘だとしても構わないと思う。
俺だけしか知らない存在になるのなら、それもまた一興だと思った。



「なんかきも、俺」



勉強しすぎて頭おかしくなったんやろか。



爆発した髪を抑えながら、居間に向かう。



にしてもこの時代に、この歳になっても、この場所でまた明日、なんていうことがあるとは。



小学生に戻ったみたいや。



スマホを持つと、連絡先を交換して、どれだけ離れていてもふとした時にメールを送って意思疎通を図れてしまう。



卒業式があまり悲しくないのも、こういうことが原因なのかもしれない。



彼だけなのかもしれないけれど、コンピュータよりも自然に重きを置いているこの街が、ものすごく暖かく感じる。



無意味に焦る必要のない、この優しさがひどく染みた。



「頭から離れへんなぁ」



Aのことをずっと考えている。
家に帰ってきてから、眠るまでもずっとそうやったし。



Aのふわりと微笑む表情、からかったような表情。



愛おしさを感じるとともに、哀しさも覚える。



この街では夜に抜け出すなんて粋なことなんかも知れへんけどさ。



ときおり思いつめような顔するんはなんでなん、A。



Aの中に何がおるの。

指南するは かの海→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
49人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひるた(プロフ) - 暑苦しくて愛おしい夏が始まりますね〜🌻 (6月18日 11時) (レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 今年も夏始まりますね🔅 (6月18日 2時) (レス) @page45 id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)
ひるた(プロフ) - にこちさん» にこちさん…!毎度ありがとうございます😭心に残る作品になりますよう、善処いたします! (2023年3月20日 0時) (レス) @page13 id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
にこち(プロフ) - 新作おめでとうございます!!どんなお話になるのか、作品を見かけた時からワクワクしてます! (2023年3月19日 21時) (レス) id: 7ce575ffce (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ひるた | 作成日時:2023年3月12日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。