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「照史くん…?」
「別になぁ、Aをさぁ、外側の人間やなんて思うたことなんて一つもないねんかぁ、
俺は、ずっと、Aと喋ったときから…ずっとずっと、俺という人間に必要なやつやって思ってるねん…」
「照史くん、」
「変なこと言うなやぁ。なに自分だけのけ者やと思ってんねん…そんなわけないやろ…?
お前は大事な友達なんやで…?」
「なんで照史くんが泣いてるのよ〜…」
本当はAが泣きたいはずなのに、抱きしめて慰めてやらなあかん俺が泣いてしまっている。
「気づかんくてごめんなぁ…」
「照史くんのことを悪いなんて思ったことないよ、泣かないで」
抱きしめられているはずのAに背中を撫でられる。
贖罪の気持ちが伝わってしまったのだろうか、逆に慰められてしまう。
出会ってから数年、一番近くで彼を眺めているにも関わらず、そんな思いをさせていたなんて。
俺、ずっとこいつのこと理解していこうって思ってたのに。
やっぱ、思うだけやったらあかんのかなぁ。
「いいの、照史くん。
照史くんにはずっと支えてもらってるって分かってたから、辛いことなんて全然なかったよ。
照史くんに会えてよかったって、ずーっと思ってる。
僕にとって本当に大事なひとだよ」
眉を下げ、困った表情を作る。
その姿さえも、今は弱々しく見えた。
「こんな性格だけど、いいことだってたくさんあったんだよ。
色々経験してきたから、説得力のある歌詞を書けるし、照史くんのような優しい人にも出会えたし。
確かに生きづらいし、変に気を遣うし、何事も完璧にこなしたいと思うけど、それも僕なんだよ。
僕っていう個性だって、受け止められてるから。
だからいいの。照史くんのおかげで、今の僕があるんだから。」
知らない間に、彼がこんなにも成長していただなんて。
君を深く知る前に、もっと君は深く深く潜っていった。
ああ、やっぱ、俺って普遍的な人間なんや。普通の幸せを、神様から賜るだけでええ人間なんやな。
Aは人間性を磨いているというのに、俺は傍でそれを眺めることしかできひん。
「俺、ずっとAと一緒におりたい」
「なにそれ、僕にプロポーズしてるん?」
「プロポーズでもなんでもええわ、もう」
でも、眺めるだけでもええなら。
ずっとお前の背中を抱きしめていたい。
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作者名:ひるた | 作成日時:2023年1月28日 1時