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「おつかれさん。遠かったやろ?
なんでも飲みたいもん言うてや、取ってきたるで」
「自転車ならすぐだから大丈夫。
そうだなぁ、照史先生のおすすめは?」
「桐山家特製の麦茶は絶品やで」
「麦茶苦手なの、僕。
ジャスミンティーとかあったら最高なんだけど」
「女子かお前(笑)」
涼しくなってきたとはいえ、まだまだ暑い。
この時期、桐山家はキンキンの麦茶を冷蔵庫に常備している。
これはほんまにうまい。俺的には一番の夏の風物詩や。
やけど、Aは麦茶が苦手らしい。
たぶん、麦茶、ってよりも人んちの麦茶がなんか嫌なんやろう。こいつはそういうやつや。
ジャスミンティーなんてそんな洒落たもん、あるわけないし。
「さて、何を勉強しましょうか」
結局ふたりとも水になった。ほんまは麦茶が良かってんけど。
Aは早速勉強道具を取り出して、机を埋めていく。
「Aはいつもどんな勉強してるん?」
「僕?僕はその時の気分によるけど、余裕があるときはノートにもう一回まとめたり、ワークを自分で作るね」
「…なんか、努力型ってかんじ」
「昔から文字を書くことが好きだったから、僕は書いて覚えるのが一番なんだよ」
Aならやりかねない勉強の仕方や。
前に言っていたけど、今はむしろあまり文字を書かなくなったほうで、昔は一日に何千文字、多いときには何万文字書くことも珍しくなかったそう。
何をそんな書くことがあるんや、と思ってたら、大半が漢字の勉強やったり、国語の勉強やったり。
作詞はもちろんしていたらしいけど、文字を書くには国語の勉強が手っ取り早かったそうや。
こういうのを変態っちゅーのか。
「僕、辞書を読むのが好きでね。辞書はね、意味を調べるだけのツールじゃ無くて、読書するのも楽しいんだ。
例えば、広辞苑だと、正しい読み方とか、正しい使い方。社会で通用している意味とは違っているものもあるんだよ。
英字辞典は、日常生活で使う英語とか、習った英語の答え合わせや復習ができるのが良いところだよね。こうやって読むんやー、っていう発見があるし。
まあ、僕は昔から肌なじみがある国語辞典かなぁ。文字がぎっしり詰まってるなんて素敵。
ミニサイズの辞書持ち歩いてたの思い出すなぁ」
あまりの個性の強さに身震いしてしまった。
これに共感してやれる奴がどこにおるんや、みたことないで、俺…
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作者名:ひるた | 作成日時:2023年1月28日 1時