それでもロコモコ。 ページ5
「潤くん以外は雇わないわけ？」
潮の匂いを含んだ風が舞い込んでくる。背から受けた2人の髪がフワと舞う。
ニノの問いに頷く俺。
去年の夏終わりにバイトが2人辞めた。潤と、相葉。
それ以降、新規募集は考えてもいなかった。
「じゃあ、戻ってきても枠はないわけね」
台風が多く、ともなってフェーン現象がナントカ。
今年の夏は特に暑くなるらしい。
梅雨を迎えるよりもずっと前から、天気予報士が口をそろえて言っていた。
最近は毎日のように木原さんとそらジローが熱中症予防を訴えている。
過去最高気温の昨年、新記録は今年容易に打ち立てられそうだ。
ニノの言葉に主語はない。誰がとは言わない。
相葉が消えてから、ニノは奴の名を俺達に聞かなかった。
『多分、しっくり来ないから、良いわ』
ニノは相葉をジェイと呼んでいたらしい。
それ以来、智くんも俺も潤も、相葉雅紀の名前をニノに伝えていない。
決してニノを思ってではない。
相葉の本名を教えた時、ニノの中に違和感が生まれるのが怖いだけだ。
相葉は誰よりもニノを想って嘘をついていた。
本物の相葉を否定された時、多分俺は立ち直れないだろう。
ポケモンGoをしながら空港で笑った日から、あっという間に1年が経とうとしている。
「まぁ、元々雇う気ないからな、バイト」
黙々とロコモコを口へ運ぶ智くん。
食べ終わって早速スマホをいじるニノ。
日本へ残って舞台の勉強を始めた潤。
俺達の前から完全に姿を消した相葉。
俺は不誠実なバイトです。
今思えばその言葉を、相葉はどう受け取っていたのだろうか。
言わなければ良かったと些細な出来事に後悔をしている俺は、
去年の夏からあまり成長していないのだろう。
「…ああー！もクソーーー！！」
「「！？」」
当然の奇声に驚いて顔を上げた2人。
茶黒い瞳が合計4つ、不思議そうに俺を見つめた。
止めだ止めだ、らしくないぞ櫻井翔。
4人はどの道であれ、すでに進んでいる。
「それでは聴いてください、櫻井翔で『それでもロコモコ。』」
「「！！？？」」
去年よりも暑い今年の夏、イケメンと不誠実なバイトはもういないのだから。
続く
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うる(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん。コメントありがとうございます&お久しぶりです…(2年ぶりぐらいでしょうか笑)！長いお付き合い感謝です！えりんこさんの5人を最初から読み直しながら「そうだ書こう」と衝動に駆られたのが1か月程前。まさかのコメ本当に嬉しいです。こちらこそ感謝です！ (2019年12月14日 13時) (
レス) id: 38e5c6c587 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - 少し期間があいても、あっという間にこの物語の中に戻れてしまう。ちゃんとそれぞれが、私の頭の中に息づいているからですね。相変わらずすごいなぁと思います。いろんなアイテムの持ってき方！そしてタイトル！やっぱり素敵です。更新感謝です！ (2019年11月26日 8時) (レス) id: 4506ccd493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うる
| 作成日時：2019年11月23日 14時
