それでもロコモコ。 ページ4
「はいよお待ち！」
カウンター越しにプレートを2皿出す。
彩り鮮やかなロコモコ。目玉焼きに刺した旗が海風で僅かに揺れ動く。
１人で運営すると決めてから、それまで出していた様々なメニューは一度止めた。
物理的に、俺１人の力では調理や洗い物が回らなかった。
完全には不可能でも、メニューを絞れば開店前の下準備で何とかカバーできる。
「お待ち、ってアナタ寿司屋？」
「何だコレ、米の上にサラダ乗ってんぞ？」
「うるさいなもう！智くんは可愛いから許す！」
「元カレ贔屓反対！！」
「バカニノ抉るな！」
ギャンギャンと騒ぐニノ。
その横でスプーンを持った智くんは、恐る恐る目玉焼きを突いている。
ペースに巻き込まれながら時間が流れる。
久しぶりの感覚に浸かった心が、思い出すように静かに震えている。
「今日は？」
「二回戦だな。もう少し後、日没ギリが意外とピーク」
「夜も翔くん一人なのか」
智くんの言葉に苦笑い。
昼も夜も、バイトを雇わないこの店は俺一人だ。
「潤くんは？」
「他でバイト」
「振られたな」
「……」
バッサリと叩かれた智くんに何も言えない。
智くんはプレートに意識を戻してサラダを口へ運んだ。
「お手伝い来てくれるって言ってたじゃない？あれは？」
口いっぱいにロコモコを頬張ったニノが聞く。
左手に握ったスプーンを俺に向けて「頼ればいいのに」と視線を投げてくる。
「断った。まぁ、暇なわけじゃないからな」
去年バイトで入っていた潤は、今年の夏さらに忙しそうだった。
大学を卒業して、周囲は正社員として金を稼いでいる。その中で潤はバイトと派遣を掛け持ちして、都心の劇団で演出の勉強をしている。
どんなに多忙でも言えば必ず、優しいイケメンは快く手伝いに来てくれるだろう。
だからこそ、潤を呼ぶわけにはいかない。
「去年は潤くん目当てのお客さんも多かったのにね」
「いや…今年は俺目当ても多い……はず」
尻すぼみの言葉に、カラカラとニノが笑う。
「教えてあげよっか。元ヌードモデルがイロイロと」
悪戯を思いついた表情で怪しく口角を上げる柴犬。
世の中を俯瞰したような言い方は、出会った頃を思い出す。
「…ニノ米粒ついてんぞ。鼻の下」
「わ！？」
正面を向いたまま、隣の智くんがぼそりと呟く。
カウンターのナプキンに慌てて手を伸ばすニノ。
「何？エスパーなの？」
「いんや。エスパーじゃない」
俺の言葉にモソモソと口を動かしながら智くんが微笑んだ。
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うる(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん。コメントありがとうございます&お久しぶりです…(2年ぶりぐらいでしょうか笑)！長いお付き合い感謝です！えりんこさんの5人を最初から読み直しながら「そうだ書こう」と衝動に駆られたのが1か月程前。まさかのコメ本当に嬉しいです。こちらこそ感謝です！ (2019年12月14日 13時) (
レス) id: 38e5c6c587 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - 少し期間があいても、あっという間にこの物語の中に戻れてしまう。ちゃんとそれぞれが、私の頭の中に息づいているからですね。相変わらずすごいなぁと思います。いろんなアイテムの持ってき方！そしてタイトル！やっぱり素敵です。更新感謝です！ (2019年11月26日 8時) (レス) id: 4506ccd493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うる
| 作成日時：2019年11月23日 14時
