巨大なのって突然。 ページ2
「翔さんの店も本格的にシーズンね。」
正午を過ぎたアトリエは基本的にサウナ状態。
1階の冷蔵庫から麦茶を持って来て、ニノへ渡す。
パタパタと、水滴が床に落ちた。
「いくか？」
「忙しいのに拍車かけてどうすんの。」
基本的に常識のないニノに、正論を返された。
確かに翔くん最近忙しそうだもんな。
俺のアトリエと翔くんの店が隣接するビーチは、猛暑の恩恵を受け連日大盛況。
この時期馬車馬のように翔くんが働いている姿は、もはや季節もののイベントのような、恒例行事だ。
「潤くんもヘルプで入んの？」
カラリと、ニノが持っていた麦茶が音を立てた。
本当に猫の様に、するりと違和感を飛び越えていく。
「……いんや。」
「そ。」
他のバイトで忙しくて入れるわけないか、と1人で納得したニノ。
その口から名前が出て、僅かな引っ掛かりを喉の奥に覚えた俺とは大違い。
そもそも心臓の作りが違うのかもしれない。
「大丈夫なのかね。去年とかバイト2人でぎりぎりだったらしいじゃない。」
「まーな。」
うだる様な熱さ。
汗を思い切りかいた服のまま、今すぐ海に飛び込みたい。
飛ぶように過ぎていく時間が、それでも足を止めて、今日みたいな1日を思い出にしていく。
あぁそうか。
コイツが今日、俺を訪れた理由が分かった気がする。
「去年もだけど、今年も暑いな。今年の方が暑い。」
足元に落ちていた新聞紙でパタパタと仰ぎながら言う。
ニノと出会った1年前を思い出す。
「太陽が頑張ってんのよ。…バカみたいに単細胞だから。」
思い出す面影がある。
輪郭を帯びて、けれども蜻蛉のように。
忘れたくないと、知りたいと、会いたいと、知りたくないと、会えるのかと。
5色ぐらいの色が、ドロドロに溶けて混ざりあっている。
「…やっぱ行くか。翔くんの店。」
「…そーね。なで肩茶化してやりましょ。」
「何だそれ。」
俺達の届かないところに、太陽はある。
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うる(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん。コメントありがとうございます&お久しぶりです…(2年ぶりぐらいでしょうか笑)！長いお付き合い感謝です！えりんこさんの5人を最初から読み直しながら「そうだ書こう」と衝動に駆られたのが1か月程前。まさかのコメ本当に嬉しいです。こちらこそ感謝です！ (2019年12月14日 13時) (
レス) id: 38e5c6c587 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - 少し期間があいても、あっという間にこの物語の中に戻れてしまう。ちゃんとそれぞれが、私の頭の中に息づいているからですね。相変わらずすごいなぁと思います。いろんなアイテムの持ってき方！そしてタイトル！やっぱり素敵です。更新感謝です！ (2019年11月26日 8時) (レス) id: 4506ccd493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うる
| 作成日時：2019年11月23日 14時
