巨大なのって突然。 ページ1
「…暑くねぇの？」
「あちぃわバカ。」
突然、本当に突然。
2か月振りにアトリエへ来たニノは、7月も後半のこの時期に長袖長ズボン、全身真っ黒だった。
「黒猫みたいだな。」
ひょろりと長いシルエットに、初めて出会った時の事を思い出す。
今よりもっと、ガリガリだった。不健康なぐらいに。
「仕方ないじゃない。バイト着なんだから。店内はクーラーでいいけど、出た途端、地獄。」
我がモノ顔でアトリエのソファーに座り、黒いローファーを脱ぎ散らかす。
さらに下へ履いていた黒いソックスを脱いで、床に散らばる絵の具チューブの上へ投げた。
毎日通ってた頃と何も変わらないニノの姿に、俺の時間だけが進んだのかと錯覚するけれど、壁のカレンダーは前回ニノと会った春過ぎから確かに2枚めくれていた。
「大野さんいい加減クーラーつけましょ、ココ。」
「…いいんだよ。窓を開けてたら海風入るし。」
「老人の室内熱中症のニュース知ってます？」
「…靴下汚れるぞ？」
「うわ！」
俺の言葉に、ソファーへグッタリと背を預けていたニノが、猫の様なスピードで靴下を慌てて拾い上げた。
固まった絵の具のチューブがカラリと揺れる。
ニノの派手な動きに、アトリエの木の床が音を立てた。
…出会った頃よりも、何かコイツ雄々しくなったな。
思わぬ来訪者に、止まっていたアトリエの時間が、ゆっくりと動き出す。
「窓開けるって言っても、嵐の日とかどうすんのよ。」
興味がなさそうにニノが聞いてくる。
午前中にぼんやりと描いていた絵は、今日はもう手が付けられない予感がする。
「いいんだよ。滅多にこねぇから。」
「分かんないじゃない。巨大なのって突然くるのよ。20年に1回ぐらい。」
「何だそれ。」
「カラフルなヤツ。大野さんが想像もできないヤツだよ。」
目を細めて、まるで見てきたかのようにニノが言う。
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うる(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん。コメントありがとうございます&お久しぶりです…(2年ぶりぐらいでしょうか笑)！長いお付き合い感謝です！えりんこさんの5人を最初から読み直しながら「そうだ書こう」と衝動に駆られたのが1か月程前。まさかのコメ本当に嬉しいです。こちらこそ感謝です！ (2019年12月14日 13時) (
レス) id: 38e5c6c587 (このIDを非表示/違反報告)
えりんこ(プロフ) - 少し期間があいても、あっという間にこの物語の中に戻れてしまう。ちゃんとそれぞれが、私の頭の中に息づいているからですね。相変わらずすごいなぁと思います。いろんなアイテムの持ってき方！そしてタイトル！やっぱり素敵です。更新感謝です！ (2019年11月26日 8時) (レス) id: 4506ccd493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うる
| 作成日時：2019年11月23日 14時
