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と、真顔で差し出されたのは言の右手。
意味がわからない。
手袋とかカイロを渡してくれた訳じゃない。
その手には何も乗っていない。
不思議そうな私に言は、

「繋ぐ?」

「なんでだよ」

表情変わらず真顔で言うから怖い。
何考えてんだか。
これでこの話は終わるかと思ったが、言が口を開き話を続けた。

「俺は繋ぎたいと思ってるよ」

「え?」

「今も触れたくて仕方ない」

「は?」

「好きな人が隣にいて、手出すなって言われてもね」

「え、待って、何言ってんの?」

「Aが好きだってこと」

まさかの台詞に心臓の音が大きくなる。
何で、何で私なの!?
あの人気者の言なんて選び放題だろうに、何で!?
確かに事故物件ではないと思ってたけど、さすがに趣味疑うって!

「そんなに驚かないでよ。俺は結構分かりやすくしてたつもりだよ。」

もうわかんない、頭パンクする。
どうしたらいいのこういうときって!

「Aが本当は問ちゃんの方がタイプだって知ってる。でも、誰にも負けないくらい幸せにするよ。」

いくら私が問くんの方がタイプとはいえど、顔が良いのには変わりない。
くそー、悔しいけどその顔に口説かれたら落ちるって。
でも、妥協はしないって決めてるから。
どんなにパニクっても、答えは最初から決まってるようなものだった。

「言は友達。でも誠意を足蹴にはしたくない。だから、これからゆっくり言に恋しても良いですか?」

「うー。」

「何唸ってるのよ。」

「悔しいけどイケメンだなぁって思って。」

「何言ってんの。言だってあんだけ男気見せたじゃん。かっこよかったよ。」

「うー。」

「もー、泣かないでよ。あたしが泣かせたみたいじゃん。ほら。」

鞄からハンカチを取り出し、言に渡す。
軽く涙を拭き、洗って返すと、そのまま自分の鞄の中に仕舞った。

止まっていた足を駅に向かって進めだす。
そして今更気がついた。
言が私に歩幅を合わせてくれていること、しれっと車道側を歩いてくれていること。

なんだよ、しれっと1番かっこいいじゃん。
少し見上げた先にある言の目を見て、馬鹿野郎と心の中で呟く。

これから恋する2人。
まだまだ冬はこれから。

.

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作者名:ヱ崎 | 作成日時:2022年11月1日 16時

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