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お昼、食堂でご飯を食べようとしていると少し向こうの方でAちゃんの姿が見えた。
言ちゃんとの話を聞きたくてお弁当を持って彼女の居る席に行く。
そのとき彼女は1人で、話を聞くには丁度良かった。
「Aちゃん、こんにちは」
「あ、問くん、こんにちは」
隣いい?と聞くとどうぞと微笑んでくれたので、僕は椅子に腰を下ろした。
少し他愛のない話をして、僕は本当に聞きたかったことを問う。
「言ちゃんとのデートはどうだった?」
それを聞かれたAちゃんは少し恥ずかしそうに笑って、楽しかったよと言った。
そうだよな、またデートするくらいだもんな、楽しかったに決まってる。
心のどこかで少し暗い感情が生まれるがまた無視をして、もう少し踏み入ったことを聞く。
「言ちゃんのこと好き?」
すると彼女は更に顔を紅く染め、もごもごと喋り出した。
「好き。だけど、今は友達としてかな。もっとこれから知っていけたら嬉しいなぁとは思う」
その答えで十分だった。
彼女が言ちゃんのことを好きなのも、
僕がAちゃんのことを好きなのも。
気がついてしまった、気がつかないようにしてたのに。
言ちゃんの邪魔をするから僕はこの感情を無意識のうちに蓋をしていた。
でも今、言ちゃんへの気持ちを聞いた今、我慢がならず蓋を開けてしまった。
パンドラの箱。
ごめん言ちゃん。
もう応援できそうにない。
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その日学校が終わったあと、僕はオフィスで撮影した。
もう21時、撮影は終わっているが帰りたくない。
誰かに少し話を聞いて欲しい気分だったのだ。
当の言ちゃんは課題が多いとのことでそそくさと帰って行った。
今オフィスにいるのは、数人のライターや社員と今日の撮影メンバーくらいだった。
僕はすぐ目の前に座っていて、パソコンを挟んでしばらく目が合っている河村さんに相談することにした。
「河村さん」
「なあに」
「言とAちゃん付き合うかも」
「へえ、良かったじゃん」
「でも僕もAちゃんのことが好き」
それを聞いた河村さんは一気に楽しそうな顔になり、それでそれでと聞いてきた。
何処に食いついたかはよく分からない。掴みどころの無い人だとつくづく思う。
僕はここ数週間の言ちゃんとAちゃんとのエピソードを話した。
「なるほどね。問の言を大切に思う気持ちは分かった。でも、問もAのこと好きなんでしょ?自分の気持ちを抑え続けるの、辛いよ。ちゃんと話しておいでよ、言とも彼女とも」
纏まった短い返事だったが、僕は背中を押された気分になる。
抑え続けるのは辛い、分かってる。
僕は彼女と言ちゃんに全部話すことを覚悟した。
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作者名:ヱ崎 | 作成日時:2022年11月1日 16時