マジック -kwmr- ページ1
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魔法がひとつ使えるなら何が良い？
人の欲を暴き出すチープな質問。
僕は魔法なんて使えなくていいから、彼女と一緒にいたい。
そんな切な願いを叶えるのに魔法はやはり、必要なのだろうか。
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うちのオフィスには高嶺の花がいる。
外見は疎か、所作までもが美しいそんな女性だ。
僕はそんな花に密かに恋心を抱いている。
叶うことのない恋だと分かっていても、気を惹く為に色々なことをしたくなる。
連絡先を聞いてみたり、ご飯に誘ったり、さりげなく隣に座ってみたり。
でも結果は全てダメで。彼女の連絡先すら持ってない。
そんな僕の姿を見て福良にはしみじみと「河村は頑張るねぇ」などと言われる始末だ。
今日こそは今日こそはって毎日思うのに、思うだけで終わってしまう。
それでもめげずに今日も、今日こそはと思ってオフィスに来ている。
しかし、何も起こせず。気がつけば夜。
今日は仕事が終わらなくて、残業が付いてきた。
そんな最悪の夜に、ひとつため息をつく。
そこで集中が一度切れ、昼間から詰めていた為かなり疲れていることに気がつく。
一度息抜きをしよう、そう思い立ち上がった。
ソファで少し横になろうと、撮影部屋に向かう。
すると、自分しかいないはずなのに、部屋は電気が付いていた。
誰かの消し忘れだろうか。そう思って中に入ると、先客がいた。
ソファでブランケットを掛けて寝ていたので、誰か分かりずらいが、きっとAさんだろう。
下手に起こしたら嫌われてしまうかもしれない。でも、寝顔を見たい欲望が勝ってしまい、僕は彼女に近づいた。
恐る恐る顔を覗くと、すやすやと眠る彼女がいた。
普段とは打って変わって、幼い雰囲気のある彼女が可愛くて。僕の欲はさらに露になる。
「好き」
二人きりの空間なのに、誰にも聞かれないように小さな声で呟く。
そして、艶のある黒髪をするすると撫でた。
「…ん」
Aさんは眠そうに体をゆっくりと起こす。
不味い、起こしてしまった。
忙しい彼女は相当疲れているはずなのに、何をしているのだ。
罪悪感と緊張感に苛まれ、僕はその場で固まってしまう。
「かわむらさん…？」
いつもの凛とした声からは想像もつかないくらい甘い声を出すAさん。
好きな人からそんな風に名前を呼ばれて、嬉しくない人はいないだろう。
かくいう僕も心臓が飛び跳ねるくらいに嬉しかった。
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作者名：ヱ崎 | 作成日時：2022年11月1日 16時
