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「剣城君と天馬のパスのスピードが違うんです。だからその違いで敵チームにどちらがボールを持っているのか把握されている。」
「なるほど…それで動きを先読みされて、絶対障壁によってガードされてしまう、ということか。」
キャプテンの声に頷く。こうなると、天馬に替わってダブルウィングの先頭を務める人物が必要になってくる。でも、それは…
「おーい！おまんらー！」
と、突然聞こえてきた大きな声に私は現実に引き戻される。おまんって…土佐弁？
声が聞こえてきた方を見てみる。するとそこにいたのは、
「錦龍馬！只今参上ぜよ！」
長い黒髪を揺らして颯爽とコチラに駆けてくる、イタリア留学から帰って来た錦先輩だった。
「錦！」 「間に合ったか！」
予想もしていなかった救世主、錦先輩の元に一斉に駆け寄る。まさか試合に間に合わせるなんて…！錦先輩が息を切らしながらも口を開く。
「いやぁ、おまんらがなんじゃ革命じゃゆうて、厳しい戦いしちょるて聞いてのぉ。いてもたってもおられんようになったがじゃ。」
土佐弁の鈍りで少々聞き取りにくいが、その言葉には重みがあり、頼りがいがあった。
「わしが帰って来たからには、もう大丈夫じゃ！大船に乗ったつもりでおったらええぜよ！」
「なんか頼もしい感じだね…！」
「うん！」
天馬、信介と顔を見合わせる。何だかこの人といると、気が大きくなった感じがして。今ならタクティクスも完成させられるんじゃないか、そんな気がしてきた。
「よし！錦！試合に出てもらうぞ！」
後ろでこの様子を見ていた円堂監督が声をかける。
「任せるぜよ！」
錦先輩は大きく頷き、ドンッと胸を叩く。この人がいれば、勝利に大きく近づく…！
「そして、A。お前も試合に出てもらう！」
「え！？」
安心感に浸っていた私を一気に青ざめさせた円堂監督の言葉。試合…？え、私？
「浜野、速水！交代だ！」
監督は浜野先輩、速水先輩の2人に下がるよう指示。え、本当に私…？
「え、円堂監督！私が出るんですか…！？」
焦って円堂監督につい大声で喋りかける。やっとドリブルが人並みにできるようになった初心者が全国大会に出るなんて、無茶振りもいいとこだ。
「あぁ、前半を見ていたことでもう分析は完了しているだろ？」
私の問いにケロッと答える監督。分析完了してるから試合出ても大丈夫！って訳じゃないんです！
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作者名：鏡華 | 作成日時：2020年2月12日 16時
