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「あ、やっぱりいた」
少々駆け足で河川敷に向かえば、フィールド中央付近でボールを蹴り合う天馬と信助の姿が目に映る。どうやら天馬は彼を誘い、例の新しいDF技の特訓を中心に行っているようだ。
「天馬ー！信助ー！」
思いっきり2人に向かって叫べば、肩を揺らして驚いたようにこちらを振り返る。その姿にくすりと笑みをこぼした後、私は階段を駆け下りベンチに鞄を置いて2人の方へ向かった。
「A…！吃驚したよ、いきなり大声で叫ぶんだもん」
「あはは、ごめんって。私も特訓、やらせてくれないかなって思ってさ」
そういえば直ぐに天馬は笑顔になり、2人と私の必殺技の完成の為にOFとDFに分かれて特訓しよう、と言い出した。要するに私がドリブル技の特訓、2人がDF技の特訓、両方を同時にできる効率的なものだ。
「よしっ、行くよ！」
「おう！」
ゴール前に立つ2人に声をかけたのと同時にボールを蹴り出す。まず迫ってきたのは、天馬だ。スライディングでボールを奪おうとしてくる。それをすんでのところで交わした後、今度は信助を避けるように動く。
「させないっ！」
「ッ！？」
が、その交わしも虚しく簡単にボールを奪われてしまう。流石本職のDF、動きが的確で無駄がない。何とか動きを見切ってやる…！
「もう一回、いくよ！」
その後、二回、三回…何回やっても、私は信助を抜くことができない。天馬を抜くところまでできても、彼を抜いた後の体勢のズレを利用して信助が迫ってくる為、このダブルDFを突破できないでいるのだ。
「ッ…もう一回！」
何回目だろうか。体力が限界に近づいているのを感じながら、もう一度ボールを蹴り出す。
「(天馬の癖は見抜けてきた…！)ッと！」
彼の癖はDFの方向が一定であること、そしてスライディングであること。試合の時はそう目立たないものだが、ここまで同じ作業を繰り返していると思ってもみない癖が見つかるものだ。
「今だっ！」
私の体勢が崩れた、とばかりに一気に信助が迫ってくる。ここで抜かなきゃ、もう次のチャンスはない…！絶対に必殺技を完成させて抜いてみせるんだ！
ぐっと足に力を込め、加速する。
�猊�殺技は、考えるよりも感じるってこと。何よりサッカーを楽しまなきゃできないんだよ！��
いつだったか、太陽が言っていた言葉。サッカーを、楽しむ。考えるよりも感じる。大丈夫、絶対できる！
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作者名：鏡華 | 作成日時：2020年2月12日 16時
