Encounter ページ5
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自分のことを運がいい人間だと思ったことはないんだけど、人との出会いという点においてはかなり"持ってる"方なんじゃないかと思う。
飛行機に乗る前に送った足元の写真には、セルカを送れという趣旨の文句が多数殺到していたらしい。
着陸してから電波を拾って、預けていた荷物が流れてくるまでにそれを確認した。
ジョンウの騒がしい犬のスタンプとか、悠太くんの周りを無視した日本語の返信とかはまだ笑える。
ドヨンイヒョンの真面目な長文は読むのが疲れそうだからそのままトーク画面を閉じちゃった。
さて、ここからどこへ向かおうか。
このライムグリーンのキャリーケースは結構いいとこのやつ。
ベッキョニヒョンが買ってくれたし、ツヤツヤしてて色が可愛いからお気に入り。
自分でもそれなりに恐ろしいんだけど、どこに行くとか今日のホテルとか今の所なにも決めてないのだ。
マークのおすすめの場所には後日行くとして、とりあえず都市の方に出ればいっか。
『、ッわぁ！！』
そんな感じで足を進めた矢先、後ろから腕を掴まれてそれはもうびっくりしたのと、単純に前に進めなかったのとで変な声が出てしまった ような気がする。
視界に入ってきたのは、大きなリュックとわたしと同じキャリーを持った男の子。
両手を膝について、肩で息をしている。
わたしの追いかけてきた、のかな？
パッとあげられた顔はアジア人っぽかった。
うーん、なんか喋ってるけど....何語だろう？
ここはカナダだからやっぱり英語？
いや、韓国語の口の動き見えなくもないけど、日本語？中国語？
言葉が通じない、と言う点においてどこの国にいても自分は同じなのでは？、という単純な思考から海外へ足を進めてしまったもののいきなり壁にぶつかってるのかもしれない。
意思疎通はテキストや筆談でどうにかなるにせよ、初対面で相手の第一言語を見極めるのはなかなかの至難の業だ。
一生懸命何か説明をしてくれてるんだけど、この人もわたしに話がなかなか通じないことに困った表情を浮かべている。
絶対今この状況でこんなことを考えているのは間違ってるんだろうけど、この慌ててる感じとかジェスチャーがやたらでかいのとか、マークみたいでかわいい。
あ、やっぱりカナダだから？
いや、でもこの子はどう見てもこっちの子じゃなさそうだよね？
あー違う違う。
それでわたしはなんで引き留められてるんだっけ...？
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作者名：ナカム
| 作成日時：2024年1月28日 20時
