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NCTWISH YUSHI
しばらくして撮影が再開して、場に残った俺とサクヤとリョウの3人。
Aヒョン(そうやって呼んで良いって言ってくれた)はサクヤとノリが合うみたいで、アプリを通してるとは思えないスピードでキャッキャと話を弾ませている。
正直、この光景を見れば"聴こえない"っていうのが本当のことのようには思えない。
会話の途中で何度か視線はケータイに落とされるけど、俺たちが話すのと遜色ないテンポや間で普通に喋るから。
sakuya「Aヒョン本当に97年生まれ？ギャルすぎない？」
「え？ギャル？(笑)初めて言われたんだけど」
いつのまにかタメ口になってるし、そのフランクさにこっちは若干ヒヤヒヤする。
Aヒョンは全然気にしてないみたいなのでよかったけど。
「あ、そういえばさレコーディングじゃなくてスタジアムでもみんなのこと見てるんだよね」
ryo「えっ、でも俺たちが出たの日本公演だけですよ？」
「うん。だから日本公演で。実はこっそり見に行ったの」
にひひ、といたずらに笑ったAヒョン。
スタジアムなんてオレも立ったことないよ、すごいねぇ、ってリョウの頭を犬みたいに撫でた。
sakuya「誰にもバレなかったの！？」
「うん。普通にシズニの隣で見たよ」
ryo「うわー...そのシズニ羨ましすぎる」
「何言ってんの(笑)ただの一般人ですよ〜」
ryo「あっ..」
デジャブ、、、
独り言のつもりだったつぶやきがアプリに拾われて顔を赤くしたリョウ。
自分と同じミスをした友人をニタニタと嬉しそうにサクヤが眺めている。
AヒョンがNCTとして活動していた頃、練習生期間がすごく短いのだという話を耳にしたことがあった。
自分はチームの中でも練習生の期間が長い方であって、まだデビューの兆しも見えていなかったあの頃なんて余計嫉妬のような気持ちが芽生えたのを覚えている。
そもそも練習生の自分ごときが、そんな対象にしていい人じゃないのに勝手に嫉妬して、より存在を遠ざけた。
自分がアイドルになって、アイドルだった人がそうじゃなくなってからその人のことを好きになってしまうなんて、皮肉な話だ。
「ユウシ？」
yushi「ヒョン...___」
アプリにも拾われない小さな声でしか言葉にすることのできなかった"ごめんなさい"。
伝えるべき目の前のこの人には届かなかったはずなのに、
「んふふ、声ちっちゃ」
目を細めて綺麗に笑ったんだ。
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作者名：ナカム
| 作成日時：2024年1月28日 20時
